損益分岐点売上高の計算方法|固定費・変動費の分け方


  • ・ 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率で算出できる
  • ・ 固定費(家賃・人件費の固定分)と変動費(食材費等)の正しい分類が前提
  • ・ 目標利益からの逆算で「必要売上高」と「必要客数・客単価」を具体化できる

「何円売れれば黒字になるか」を数字で把握する

飲食店経営で「売上はあるのに利益が残らない」という状況が続く場合、 自店の損益分岐点(Break-Even Point)を正確に把握していない可能性があります。 損益分岐点を知ることで、「最低限いくら売れれば赤字にならないか」が明確になり、 目標設定・シフト計画・価格改定の判断に直結した経営指標になります。

1. 固定費と変動費の分け方

損益分岐点を計算するには、まずコストを固定費変動費に 分類する必要があります。

区分定義飲食店での主な例
固定費売上に関係なく毎月発生するコスト家賃・リース料・正社員人件費・保険料・減価償却・月額サブスクリプション
変動費売上(販売量)に応じて増減するコスト食材費・アルバイト人件費(シフト調整可能分)・消耗品費・クレジット手数料

人件費の分類に注意

人件費は一部が固定費(正社員・役員報酬など)、一部が変動費(シフト調整可能なアルバイト)に 分かれます。アルバイトのシフトを売上に応じて完全に調整できる場合は変動費、 最低限の人員確保コストは固定費として分類するのが実態に近い扱いです。

※ 固定費と変動費の分類は経営実態に応じて判断してください。明確に分けられないコストは 固定費として計上することを推奨します(保守的に見る観点)。

2. 限界利益率の計算

限界利益とは、売上から変動費を引いた利益です。 固定費の回収や利益の源泉となる利益で、限界利益率が高いほど損益分岐点は低くなります。

限界利益 = 売上高 − 変動費

限界利益率(%) = 限界利益 ÷ 売上高 × 100

計算例

  • 月間売上高: 200万円
  • 変動費(食材費+変動人件費): 80万円
  • 限界利益: 200万円 − 80万円 = 120万円
  • 限界利益率: 120 ÷ 200 × 100 = 60%

飲食店の場合、食材費(F)が変動費の主体です。 原価率(食材費÷売上)と変動人件費率を合計した「変動費率」を引いた値が限界利益率になります。 原価率・変動人件費率の管理については飲食店のFL比率とは?計算方法と目標値の設定も参照してください。

3. 損益分岐点売上高の計算

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率

計算例(続き)

  • 月間固定費: 家賃30万円 + 正社員人件費30万円 + その他固定費10万円 = 70万円
  • 限界利益率: 60%(前例より)
  • 損益分岐点売上高 = 70万円 ÷ 0.60 = 約116.7万円/月
  • → 月117万円以上の売上があれば黒字(固定費を回収できる)

この計算から「月117万円の売上が最低ラインで、200万円売れれば83万円の利益が残る」 という構造が見えてきます。損益分岐点売上高を把握することで、 「今月あと何万円足りないか」という経営課題が具体的な数字で見えます。

4. 目標利益からの逆算

損益分岐点は「赤字にならない最低ライン」です。 目標利益を設定している場合は、そこから必要売上高を逆算できます。

目標売上高 = (固定費 + 目標利益) ÷ 限界利益率

目標利益30万円/月の場合

  • 固定費: 70万円
  • 目標利益: 30万円
  • 限界利益率: 60%
  • 目標売上高 = (70 + 30) ÷ 0.60 = 166.7万円/月

客数・客単価への分解

目標売上高を算出したら、次は「客数×客単価」に分解して具体的なアクションに落とし込みます。

例:目標売上高167万円/月の分解

  • 客単価: 1,500円と想定
  • 必要客数: 1,670,000 ÷ 1,500 ≒ 1,114人/月(約37人/日)
  • → 「1日37人×1,500円」を達成するためのシフト・席数・営業時間を逆算

5. 損益分岐点の改善方法

損益分岐点を下げる(赤字になりにくくする)には、以下の2方向があります。

方向①:固定費を削減する

  • 家賃交渉・移転による賃料削減
  • 正社員比率の見直し(業務委託・パート活用)
  • 不要なサブスクリプション・リース契約の見直し

方向②:限界利益率を高める

  • 食材費(原価率)の削減:仕入先見直し・食品ロス削減・歩留まり改善
  • 販売価格の引き上げ(適切な値上げ)
  • 高限界利益率メニューの訴求強化(ドリンク・デザートなど)

よくある誤りと注意点

誤り①:減価償却を固定費に含めない

設備投資の減価償却は現金支出がない月でも費用として計上されます。 キャッシュフローと利益計算を混同しないよう注意し、減価償却費を固定費に含めてください。

誤り②:すべての人件費を固定費に分類する

アルバイトのシフトが売上に応じて実際に調整できるなら変動費です。 固定費に入れると損益分岐点が過大に見積もられ、過剰な警戒感につながります。

まとめ

損益分岐点売上高は「固定費÷限界利益率」で算出できます。 正確な計算には固定費(家賃・正社員人件費など)と変動費(食材費・調整可能人件費など)の 正しい分類が前提です。

損益分岐点を把握した上で、目標利益から必要売上高を逆算し、 客数・客単価に分解することで具体的な経営アクションに落とし込めます。 損益分岐点を下げるには、固定費を削減するか限界利益率を高めるか、あるいはその両方を進めます。


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