厨房設備の減価償却|「買った年に全部経費」にならない理由
この記事の要点(3点)
- ・ 10万円以上の設備は原則耐用年数にわたって費用化(減価償却)する。厨房機器・内装は「買った年の経費」にならない
- ・ 少額資産の特例(10万円未満は即時経費、20万円未満は3年均等、30万円未満は青色の特例)の使い分けが実務の中心
- ・ 減価償却は資金繰りと損益のズレを生む(金は出たのに経費は分割)。開業資金計画はこのズレを織り込んで作る
※ 金額基準・特例は税制で変わり得ます。最新の国税庁情報・税理士にご確認ください。
1. なぜ分割して経費にするのか
100万円の業務用オーブンは、その年だけの道具ではなく、 何年も売上を生み続ける資産です。 減価償却は、この資産のコストを使う年数に配分する会計の考え方で、 「今年の売上に、今年使った分のコストを対応させる」ための仕組みです。
耐用年数は資産の種類ごとに法定されており、 飲食店の主な設備の目安は次の通りです(詳細は国税庁の耐用年数表)。
- 厨房機器(冷蔵庫・オーブン等の器具備品類): おおむね5〜6年
- 内装造作(建物附属設備等): 内容により10年前後〜
- 車両(キッチンカー等): 軽自動車で4年等
- パソコン・レジ: 4〜5年程度
2. 少額特例の三段活用
全部を長期償却するわけではありません。 金額帯ごとの特例が、実務の使い勝手を決めます。
| 取得価額 | 扱いの選択肢 |
|---|---|
| 10万円未満 | 消耗品費等として即時経費化 |
| 20万円未満 | 一括償却資産(3年均等償却)を選択可 |
| 30万円未満 | 青色申告者の少額減価償却資産の特例(年合計300万円まで即時経費化) |
| 30万円以上 | 原則通り耐用年数で減価償却 |
30万円未満の特例は青色申告(飲食店の青色申告)の実利の一つです。 利益の出た年に必要な備品をこの枠で揃える、といった 年度内の投資タイミング調整が実務で使われます。
3. 資金繰りと損益のズレ
減価償却の最重要ポイントは、お金の動きと経費のタイミングが ずれることです。 開業時に300万円の内装費を払っても、 初年度の経費になるのはその一部。 「お金はないのに帳簿は黒字」という開業初年度の典型は、 このズレから生まれます。 逆に2年目以降は「お金は出ていないのに経費がある」状態になり、 資金繰りを助けます。 開業資金計画は、損益計画と資金繰り計画を 別の表として作ることが、このズレへの正しい備えです。 損益側の枠組みは損益分岐点の計算をご参照ください。
4. 中古設備と居抜きの扱い
- 中古厨房機器:中古資産は法定耐用年数より短い見積耐用年数で 償却できる(経過年数に応じた簡便計算)。中古市場の活用は 初期投資と償却の両面で合理的
- 居抜き造作の譲渡:前店から造作を買い取った場合も資産計上と償却の対象。 契約書で内訳(造作・設備・営業権)を分けておくと処理が明確になる
- 修繕か資本的支出か:修理は経費、価値を高める改良は資産。 大きな修繕は判断が分かれるため領収書の内容を具体的に残す
いずれの場合も、購入日・金額・耐用年数・償却方法を記録した 固定資産台帳を作っておくと、毎年の償却計算と 廃棄・売却時の処理が機械的に回ります。 クラウド会計の固定資産管理機能に登録しておけば、 償却の仕訳は自動で計上されます。
よくある質問
Q. リースなら減価償却は不要ですか?
A. 賃借の形なら支払リース料が経費になり、償却計算は不要になるのが 一般的です(契約形態による)。購入との比較は厨房機器のリースと購入をご参照ください。
Q. 償却中の設備を廃棄・売却したらどうなりますか?
A. 残っている帳簿価額を除却損・売却損益として処理します。 壊れた設備を帳簿に残したままにせず、廃棄時に処理するのが正しい形です。
まとめ
減価償却は、設備のコストを使う年数に配分する仕組みであり、 少額特例の三段活用と、資金繰りと損益のズレの理解が実務の中心です。 開業計画では「払う金」と「経費になる金」を分けて描き、 青色の特例枠を投資のタイミング調整に使ってください。
記帳の全体は飲食店の記帳基礎をご参照ください。
Genkaで原価計算・食品表示ラベルを自動化
レシピを入力するだけで原価率をリアルタイム計算。 食品表示法準拠のラベルPDFをワンクリックで生成できます。 初月無料トライアルで今すぐお試しいただけます。
無料で始める →