使用水の水質検査|井戸水営業の義務と水道水の落とし穴
この記事の要点(3点)
- ・ 食品営業の使用水は飲用適の水であることが基準。水道水ならその時点で適合、井戸水等は定期的な水質検査(年1回以上が目安)が求められる
- ・ 水道水でも受水槽(貯水タンク)経由の建物は清掃と検査の管理が必要。ビルインの店舗の見落としポイント
- ・ 検査結果は保健所への提示書類であると同時に、氷・製氷機の衛生管理の土台になる
根拠: 食品衛生法(施設基準)、水道法、各自治体条例
1. 水は「見えない原材料」である
仕込みに使う水、野菜を洗う水、器具をすすぐ水、そして氷。 水は全ての食品営業で最も大量に使う「原材料」ですが、 透明で無臭なだけに管理の意識から抜け落ちやすい存在です。 食品衛生の施設基準は、営業に使う水が飲用適の水(水道水、または飲用適と確認された水)であることを求めています。
郊外や農村部の工房、6次化施設では井戸水の使用が珍しくありません。 井戸水は地下水位や周辺環境(畑の施肥、浄化槽)の影響を受けて 水質が変動するため、定期的な水質検査(自治体の運用で年1回以上が目安、項目は自治体指定)が 営業の条件になります。
2. 水道水でも安心できないケース
「うちは水道水だから関係ない」にも落とし穴があります。 ビルやマンションの店舗で、水道水が受水槽(貯水タンク)を 経由して供給されている場合、蛇口から出る水の質は タンクの管理状態に依存します。 水道法や自治体条例により受水槽の清掃・検査は建物管理者の義務ですが、 小規模ビルでは管理が形骸化していることがあります。
テナントとして入居する際は、受水槽の有無と清掃記録を 管理会社に確認してください。 直結給水(受水槽なし)の建物なら、この論点はありません。 物件選びの衛生チェックは施設基準と自宅キッチン改修もあわせてご参照ください。
3. 検査の実務
- 検査機関の選定:登録検査機関や地域の薬剤師会検査センター等に依頼。 営業用の項目セット(一般細菌、大腸菌、硝酸性窒素等)は自治体の指定項目に合わせる
- 採水:指定の滅菌容器で、指示された手順(先流し等)で採水する。 手順を誤ると本来より悪い結果が出ることがある
- 結果の保管:成績書を保管し、許可申請・更新や監視指導で提示する
- 不適時の対応:飲用不適の結果が出たら使用を止め、 原因(井戸の状態、滅菌器の故障)を特定して再検査。滅菌装置(塩素注入器、紫外線)の設置が求められる場合がある
検査のタイミングは、水質が変動しやすい時期(梅雨や大雨の後、雪解けの時期)を 意識すると実態を捉えやすくなります。 豪雨災害の後は普段適合している井戸でも汚染が起こり得るため、 災害後の臨時検査も運用に組み込んでおくと安心です。
4. 氷と製氷機という盲点
水の管理は氷に直結します。 製氷機の氷はドリンクに直接入る「非加熱提供の食品」であり、 製氷機内部のカビや水垢は食中毒・異物クレームの原因になります。 原水が適合していても、製氷機の清掃を怠れば意味がありません。 月次の内部清掃(フィルター、貯氷庫)をHACCPの一般衛生管理に 組み込んでください。 記録の設計はHACCP計画の作り方をご参照ください。
よくある質問
Q. 井戸水の検査費用はどのくらいですか?
A. 検査項目数によりますが、営業用の基本セットで1〜3万円程度が目安です。 自治体指定の項目数で見積もりを取ってください。
Q. 「天然水使用」と表示したいのですが。
A. 井戸水や湧水を売りにする場合も、飲用適の検査適合が前提です。 その上で「自家井戸の天然水使用」等の事実表示は可能ですが、 水質や効能の優良誤認を招く表現は避けてください。
まとめ
使用水の管理は、井戸水なら定期検査、 水道水でも受水槽の管理確認、そして製氷機の清掃という 3つの実務に集約されます。 水は最も大量に使う見えない原材料であるという認識を持ち、 検査成績書を許可・監査対応の基本書類として保管してください。
保健所対応の全体は保健所の立入検査への備えをご参照ください。
参照法令: 食品衛生法、水道法、各自治体条例
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