原価率と粗利率の違いと使い分け|計算式と経営判断
この記事のポイント
- 原価率と粗利率は合わせると100%になる表裏一体の指標。どちらを使うかは目的次第
- 粗利率は「利益の厚さ」を示し、粗利額は「利益の絶対量」を示す。高粗利率でも売上が少なければ利益額は小さい
- メニューの値付けや改廃判断には、原価率、粗利率、粗利額を組み合わせて見る必要がある
原価率と粗利率を混同すると経営判断を誤る
「原価率は低ければ低いほど良い」。飲食店の経営では、よくそう言われます。 しかし、原価率だけを気にして粗利率や粗利額を見ていないと、経営判断を誤ることがあります。 原価率と粗利率は、どちらか一方だけでは経営判断の材料になりません。
1. 原価率・粗利率・粗利額の計算式
原価率(%)= 食材原価 ÷ 売上高 × 100
粗利率(%)= 粗利額 ÷ 売上高 × 100 = 1 − 原価率
粗利額(円)= 売上高 − 食材原価
原価率と粗利率を足すと必ず100%(1)になります。 例えば原価率が30%であれば粗利率は70%です。
計算例:ランチセット(販売価格900円、原価270円)
- 原価率:270 ÷ 900 × 100 = 30%
- 粗利率:1 − 0.30 = 70%
- 粗利額:900 − 270 = 630円
2. 粗利率と粗利額の違い:比率と絶対額
粗利率(%)と粗利額(円)は似て非なる指標です。 粗利率が高くても、売上が少なければ粗利額は小さくなります。 経営判断では両方を見る必要があります。
| メニュー | 販売価格 | 原価 | 原価率 | 粗利率 | 粗利額 |
|---|---|---|---|---|---|
| コーヒー | 500円 | 50円 | 10% | 90% | 450円 |
| ランチセット | 900円 | 270円 | 30% | 70% | 630円 |
| ステーキ定食 | 2,500円 | 1,000円 | 40% | 60% | 1,500円 |
※ 上記は説明用の仮例です。
コーヒーは粗利率90%と高いですが、粗利額は450円です。 ステーキ定食は粗利率60%と低いですが、粗利額は1,500円と最も大きい。どちらを多く売るかは「1日の回転数」や「席数」との掛け合わせで判断する必要があります。
3. 原価率と粗利率の使い分け
| 場面 | 使う指標 | 理由 |
|---|---|---|
| 食材費の管理、予算設定 | 原価率 | 売上に対する食材費の比率を見る |
| 利益の確認、売上目標設定 | 粗利率、粗利額 | 残る利益の厚さと絶対額を把握する |
| メニュー間の比較 | 原価率 + 粗利額の併用 | 同じ原価率でも粗利額に差がある |
| 値付け(逆算) | 目標原価率から逆算 | 粗利率○%確保するために販売価格を計算 |
| FL比率の管理 | 原価率(F比率) | 食材費30%以内などの目標管理に使用 |
飲食店の経営指標であるFL比率(食材費+人件費)の計算では原価率(F比率)が使われます。 FL比率の詳細については飲食店のFL比率(FLコスト)とは?計算方法・目標値・改善策を参照してください。
4. 目標原価率から販売価格を逆算する
値付けの現場では、原価率を先に決め、そこから販売価格を逆算する方法がよく使われます。
販売価格の逆算式
販売価格(円)= 食材原価(円)÷ 目標原価率
例:原価300円のメニューを原価率30%で売りたい場合
- 販売価格 = 300 ÷ 0.30 = 1,000円
- 粗利額 = 1,000 − 300 = 700円
- 粗利率 = 700 ÷ 1,000 × 100 = 70%
逆算した価格が競合や顧客の価格感覚と乖離する場合は、原価の見直し(食材変更や歩留まり改善)や 付加価値向上(盛り付けやブランディング)によって価格帯を調整します。
5. メニュー間比較での活用:複数指標の組み合わせ
メニュー改廃や重点販売メニューの選定では、原価率、粗利率、粗利額、販売数量を組み合わせて判断します。
| メニュー(仮例) | 原価率 | 粗利額/食 | 月販売数 | 月粗利合計 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aランチ | 28% | 540円 | 200食 | 108,000円 | 主力維持 |
| Bパスタ | 22% | 390円 | 400食 | 156,000円 | 粗利額最大→重点推奨 |
| Cステーキ | 42% | 870円 | 50食 | 43,500円 | 高粗利額だが回転低 |
| Dサラダ | 18% | 180円 | 100食 | 18,000円 | 粗利率高いが粗利額小 |
※ 上記は説明用の仮例です。
粗利率(%)だけを見るとDサラダが最も有利に見えますが、月粗利合計では最小。 逆にCステーキは粗利率が高いわけではないが粗利額/食は最大。 実際に貢献しているのはBパスタであることが、月粗利合計から分かります。
このような分析はメニューエンジニアリングとして体系化されています。詳しくはメニューエンジニアリングとABC分析|売れ筋と利益の可視化で解説しています。
よくある誤りと混同ポイント
- 「粗利率が高い=儲かっているメニュー」と誤解する(粗利額と回転数も見る必要がある)
- 原価率と粗利率を足して200%になると思っている(二つを足すと100%になる)
- 粗利(食材費のみ引く)と営業利益(人件費や家賃等も引く)の違いを把握していない
- 売上が増えたのに利益が増えない→原価率が上がっていないか確認しない
まとめ
原価率と粗利率は「原価率 + 粗利率 = 100%」という表裏一体の指標です。 原価率は食材費管理やFL比率管理に、粗利率は利益の厚さの確認に使います。 また、粗利率(比率)だけでなく粗利額(絶対量)と販売数量を掛け合わせた「月粗利合計」を見ることで、 実際にどのメニューが利益に貢献しているかが明確になります。
「原価率は低ければ低いほど良い」という思い込みだけで判断してきた店ほど、 粗利額や月粗利合計まで見ることで、これまで見えていなかった稼ぎ頭のメニューに気づくはずです。 値付けでは目標原価率から逆算して販売価格を決める方法が実務的で、 複数メニューの比較にはメニューエンジニアリングの考え方が役立ちます。
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