メニューエンジニアリングとABC分析|売れ筋と利益の可視化
この記事のポイント
- メニューエンジニアリングは「人気度(販売数)×収益性(粗利)」の4象限でメニューを分類し、改廃、配置、価格の意思決定に使うフレームワーク
- ABC分析は売上構成比を使い、上位メニューへの経営資源集中を可視化する
- 両者を組み合わせることで「よく売れているが利益が薄い」「儲かるが注文が少ない」などの問題を体系的に発見できる
「売れているメニュー」が「儲かるメニュー」とは限らない
飲食店で注文数の多いメニューが必ずしも利益に貢献しているとは限りません。 低価格で集客しているメニューが実は原価率が高く、利益をほとんど残していないケースがあります。 逆に、あまり注文されないメニューが1注文あたりの粗利額は最大というケースもあります。
このような「人気度と収益性のギャップ」を可視化するためのフレームワークがメニューエンジニアリングとABC分析です。
1. メニューエンジニアリングの4象限
メニューエンジニアリングは、全メニューを「人気度(販売数の平均以上/以下)」と 「収益性(粗利額の平均以上/以下)」の2軸で4象限に分類するフレームワークです。 1982年にカサバナ&スミスが発表した手法で、飲食業界で広く利用されています。
| カテゴリ | 人気度 | 収益性(粗利) | 対応方針 |
|---|---|---|---|
| 花形(Star) | 高(人気) | 高(高粗利) | 現状維持や強化。メニュー上位やおすすめの位置に配置 |
| 看板(Plow Horse) | 高(人気) | 低(低粗利) | 価格見直しや原価削減、ポーション調整を検討 |
| 問題児(Puzzle) | 低(不人気) | 高(高粗利) | 認知向上やメニュー配置の改善、スタッフ推奨で販売促進 |
| 負け犬(Dog) | 低(不人気) | 低(低粗利) | 廃番を検討。改良しても改善しなければ削除 |
分類のやり方
- 全メニューの販売数と粗利額(1食あたり)を集計する
- 全体の平均販売数と平均粗利額を計算する
- 各メニューが「平均以上」か「平均以下」かで4象限に振り分ける
- 象限ごとに改廃、価格、配置の戦略を検討する
粗利額の計算方法については原価率と粗利率の違いと使い分けを参照してください。
2. メニューエンジニアリング計算例
以下は5品メニューでの分類例です(仮例)。
| メニュー | 月販売数 | 粗利額/食 | 月粗利合計 | 分類 |
|---|---|---|---|---|
| Aランチ | 300食 | 540円 | 162,000円 | 花形(Star) |
| Bパスタ | 250食 | 390円 | 97,500円 | 看板(Plow Horse) |
| Cハンバーグ | 80食 | 720円 | 57,600円 | 問題児(Puzzle) |
| Dグリル | 50食 | 280円 | 14,000円 | 負け犬(Dog) |
| Eカレー | 320食 | 220円 | 70,400円 | 看板(Plow Horse) |
| 平均 | 200食 | 430円 | — | — |
※ 上記は説明用の仮例です。
カレー(E)は月販売数トップですが粗利額が平均以下のため「看板(Plow Horse)」。 人気があるうちに価格見直しか原価削減を検討する必要があります。 ハンバーグ(C)は粗利額が最大ですが販売数が少ないため「問題児(Puzzle)」。 メニュー位置を目立つ場所に移動し、スタッフが積極的に推奨するだけで改善できる可能性があります。
3. ABC分析による売上構成の可視化
ABC分析(パレート分析)は、売上構成比を累積したときに上位約20%のメニューが売上の約80%を占めるという「パレートの法則(80:20の法則)」をもとにした分析です。 メニューを売上の高い順に並べ、累積売上構成比でAグループ(上位70〜80%)、Bグループ(次の15〜20%)、Cグループ(残り)に分類します。
| グループ | 累積売上構成比の目安 | 対応方針 |
|---|---|---|
| Aグループ | 上位70〜80% | 重点管理。在庫切れ防止や食材調達の安定化が最優先 |
| Bグループ | 次の15〜20% | 維持しながら観察する。Aへの昇格を狙うか、Cへの降格を防ぐ |
| Cグループ | 残り5〜10% | 廃番候補。原価や発注管理のコストが高いなら整理を検討 |
ABC分析の注意点は「売上額」だけでなく「粗利額」でも分析することです。 売上が高くても原価率が高いCグループのメニューが「売上はAグループ、粗利はCグループ」になる場合があります。
4. 分析結果を経営に活かす具体的アクション
メニュー配置の改善
- 花形(Star)や問題児(Puzzle)は視線が集まりやすいメニュー上部や右ページに配置
- 看板(Plow Horse)は目立ちすぎない位置に置き、他のメニューへの誘導を図る
- 「おすすめ」「本日の一押し」などのバッジで問題児の認知を高める
価格と原価の見直し
- 看板(Plow Horse)の価格を少しずつ上げて粗利率を改善する(急激な値上げは客離れリスク)
- 花形メニューはポーションを維持しつつ、副材料や付け合わせの原価を精査する
- 負け犬(Dog)を廃番にすることで食材の仕入れ種類が減り、在庫ロスが削減できる
スタッフによる推奨(アップセル)
問題児(Puzzle)は品質が高く粗利も大きいのに知名度が低いだけというケースが多いです。 スタッフが積極的に「本日のおすすめ」として案内するだけで販売数が改善することがあります。
5. 実施のタイミングと頻度
- メニュー変更後や季節切り替え時に分析を実施する
- 月次POSデータが溜まったタイミングで定期分析(月1〜四半期1回)を行う
- 食材の価格変動があった際は粗利額を再計算して再分類する
- 分析結果は現場スタッフと共有し、推奨メニューへの意識統一を図る
食品ロス削減と在庫管理の観点からも、Cグループのメニュー整理は効果的です。詳しくは飲食店のロス管理|食品ロス・廃棄ロスの削減方法とロス率の下げ方を参照してください。
まとめ
メニューエンジニアリングは「人気度 × 収益性」の4象限で各メニューを花形、看板、問題児、負け犬に分類し、 廃番、価格改定、メニュー配置、スタッフ推奨という4つのレバーを使って経営改善につなげるフレームワークです。
ABC分析は売上構成比を可視化することで経営資源(仕入れ、仕込み、スタッフ教育)の集中先を明確にします。 月次や四半期ごとの定期分析を習慣化することで、食材単価の変動やトレンドの変化に素早く対応できます。
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