理論原価と実際原価の差異分析|3%の差の中に問題が全部いる


この記事の要点(3点)

  • 理論原価(レシピ×出数)と実際原価(棚卸ベース)の差には、ロス・ポーションぶれ・記録漏れ・廃棄の全てが入っている。差異分析は原価管理の総決算
  • ・ 差異2〜5%は通常の営業ロスの範囲とされる。監視すべきは水準より傾向(急拡大した月に原因がいる)
  • ・ 原因の切り分けは品目グループ別(肉・魚・酒等)の差異分解から。全体の3%より「酒だけ8%」が手掛かりになる

※ 差異の水準は業態により異なります。

1. 二つの原価率を作る

差異分析の前提は、二つの原価率を毎月作ることです。

  • 理論原価率:POSの品目別出数×標準レシピの原価を合計し、売上で割る。 「レシピ通りに作って売れていたらこうなるはず」の値。 前提として標準レシピ(レシピの標準化)が必要
  • 実際原価率:期首在庫+仕入れ-期末在庫を売上で割る。 棚卸(棚卸と在庫管理の基礎)から出る現実の値

実際が理論を上回る差が「説明のつかない原価」であり、 その中身は廃棄、ポーションぶれ、まかないの記録漏れ、 仕込み失敗、そして稀に持ち出しです。

2. 差異の読み方: 水準より傾向

差異ゼロは目標ではありません。 営業には必然のロス(端材、味見、提供ミス)があり、 2〜5%程度の差異は健全な範囲とされます。 管理の焦点は傾向の変化です。

  • 毎月3%前後で安定→健全。現状の運用を維持
  • 3%→7%へ急拡大→その月に原因がある。新人の加入、新メニュー、 仕入れ先変更、レシピの無断改変を疑う
  • じわじわ悪化→ポーションの緩み(ポーションコントロール)や記録習慣の劣化を疑う

3. 品目グループ別の分解が犯人を絞る

全体差異3%のままでは原因は見えません。 仕入れと棚卸を品目グループ(肉、魚、野菜、酒、その他)で分けて 同じ計算をすると、差異の偏りが現れます。 「食材は2%なのに酒だけ8%」なら、 見るべきはドリンクのポーションと記録(バーの原価管理のボトル棚卸)です。 「肉だけ悪い」なら歩留まりのぶれ(肉の歩留まり率)か盛り付けが候補になります。

グループ別管理は棚卸表の集計を分けるだけで始められます。 分解の粒度は「原因調査に動ける粒度」で十分です。 品目グループの分類は棚卸・仕入れ・POSの部門設定で 揃えておくと、毎月の集計が機械的に回ります。

4. 差異を潰す打ち手の対応表

差異の原因打ち手
廃棄の未記録廃棄記録の習慣化(廃棄記録のつけ方
ポーションぶれ道具の規定化、抜き打ち計量
まかない・試食の未記録まかない記録のルール化(品目と量)
レシピの無断改変版数管理と変更ルールの再徹底
理論側の陳腐化仕入れ単価の更新(原価データの更新頻度

差異は現場を責める道具ではなく、仕組みの穴を見つける道具です。 「誰が」でなく「どの工程が」を問う姿勢が、 記録の正直さを守り、分析の精度を保ちます。 月に一度、差異の数字と原因仮説を1行で記録しておくと、 年間を通じた自店の癖(夏に悪化する、繁忙月に開く等)が見えてきて、 先回りの対策が打てるようになります。

よくある質問

Q. 理論原価の計算が大変です。全品目必要ですか?

A. 出数上位の主要品目(売上の8割を占める程度)で近似すれば実用になります。 残りは平均原価率で置く簡便法から始めてください。

Q. 実際原価率が理論より低いことがあります。なぜですか?

A. ポーションが規定より少ない、棚卸の数え漏れ、理論側の単価が古い(実際は値下がりした) 等が典型です。低い差異も品質と記録の異常のサインとして調べる価値があります。

まとめ

理論と実際の差異分析は、原価管理の諸活動(レシピ、棚卸、記録、ポーション)が 正しく回っているかを一つの数字で映す総決算です。 水準より傾向を見て、品目グループで分解し、 仕組みの穴として潰す。 この月次サイクルが、利益の静かな漏れを止めます。

管理サイクル全体は原価率30%を守るための食材単価管理術をご参照ください。


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