棚卸と在庫管理の基礎|月に一度、店の真実を数える


この記事の要点(3点)

  • ・ 実際の原価率は棚卸なしには計算できない。「期首在庫+仕入れ-期末在庫=使用原価」が飲食・製造業の基本式
  • ・ 棚卸は月1回・同じ日・同じルールで。精密さより継続と一貫性が価値を持つ
  • ・ 在庫は現金が形を変えたもの。過剰在庫は資金繰りと廃棄の両方を圧迫する。適正在庫は「発注サイクルで使い切る量+安全在庫」

※ 手法は店の規模に合わせて簡素化して構いません。

1. 棚卸をしないと原価率は「わからない」

「今月の原価率は?」に答えるには、仕入れ額だけでは足りません。 月末に残った在庫を数えなければ、 今月「使った」原価は計算できないからです。

実際原価の基本式

使用原価 = 期首在庫 + 当月仕入れ - 期末在庫

実際原価率 = 使用原価 ÷ 売上

この実際原価率と、レシピから計算した理論原価率の差が、 ロス・ポーションぶれ・記録漏れの合計です(ポーションコントロール参照)。棚卸は、この差を毎月あぶり出す唯一の手段です。

2. 続けられる棚卸のやり方

  • 日を固定する:毎月末営業後(または月初営業前)。同じタイミングの比較に意味がある
  • 場所順に数える:冷蔵庫→冷凍庫→乾物棚と、保管場所の順に固定した棚卸表を作る。探しながら数えない
  • 単価は仕入れ値で:直近仕入れ単価×数量で金額化。厳密な評価法(先入先出等)は規模が大きくなってからで足りる
  • 開封品はざっくりで一貫させる:「0.5袋」の見積もりは粗くてよいが、毎回同じ基準で
  • 2人で分担:数える人と記録する人。1時間で終わる規模に棚卸表を磨く

精密さを追うより、毎月同じ方法で続けることが重要です。 誤差が一貫していれば、月次の変化(トレンド)は正しく見えます。 初回は時間がかかっても、棚卸表が場所順に整えば 2回目からは大きく短縮されます。

3. 在庫は現金である

棚の在庫は「もう払ったお金」が形を変えたものです。 過剰在庫は3つの形で店を圧迫します。

  • 資金繰り:使い切る前に次の支払いが来る
  • 廃棄リスク:期限切れ・品質劣化(食品ロス管理
  • スペースと管理:保管場所の圧迫、先入れ先出しの乱れ

適正在庫の目安は「発注サイクルで使い切る量+安全在庫(欠品保険)」です。 まとめ買いの値引きは、廃棄率と資金繰りへの影響を引いた 実質値引きで評価してください。 在庫回転(月間使用原価÷平均在庫)を月次で見ると、 在庫の健康状態が一つの数字で追えます。

4. 発注の仕組み化

在庫管理の出口は発注の改善です。

  • 発注点方式:品目ごとに「残りこれだけになったら発注」の線を決める。 冷蔵庫の扉に発注点リストを貼るだけでも機能する
  • 定期発注:曜日を決めて、出数データから翌週分を発注する
  • 棚札・二袋方式:予備の1袋を開けたら発注、のような物理的トリガー

どの方式でも、出数の記録(POSデータ)が精度の源泉です。 勘の発注から記録に基づく発注への移行が、 欠品と過剰の両方を減らします。 棚卸で毎月見つかる「死に筋在庫」(何か月も動かない食材)は、 発注の見直しとメニューでの使い切り企画の対象リストとして 活用してください。

よくある質問

Q. 棚卸は税務のためだけではないのですか?

A. 期末棚卸は税務・決算に必須ですが、月次棚卸の主目的は経営管理(実際原価率の把握)です。 年1回の義務としてでなく、月次の経営計器として使ってください。

Q. 調味料や油も数えるべきですか?

A. 金額の大きい品目は数え、少額の調味料類は「調味料一式〇円」の概算で 一貫させる簡便法が現実的です。精度を守るべきは主要食材(肉・魚・酒等)です。

まとめ

棚卸は、実際原価率という店の真実を毎月教えてくれる唯一の手段です。 同じ日・同じルールで続けられる形に簡素化し、 在庫を現金として見つめ、発注を記録ベースに変える。 月に一度の1時間が、数字で経営する店への入口です。

原価率管理の全体は原価率30%を守るための食材単価管理術をご参照ください。


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