仕込み原価と提供原価の違い|歩留まりを反映した実務
- ・ 仕込み原価(購入単価ベース)と提供原価(歩留まり後の実効単価ベース)は別物
- ・ 歩留まりを無視すると原価率が過小評価され、利益計算がずれる
- ・ 作り置き・仕込みの原価は1食あたりへの配分ロジックを決めて統一管理する
仕込み段階と提供段階で原価は変わる
仕入れ値をそのまま1食の原価に当てはめると、計算は合っているように見えます。 しかしそこには、トリミングロスや廃棄、仕込み中の目減りは反映されていません。
飲食店の原価計算で「仕込み原価」と「提供原価」を区別するのは、このズレを埋めるためです。 仕入れ価格(仕込み原価)をそのまま1食あたりの原価として使うと、歩留まりが無視され、 実態より原価率が低く見えてしまいます。
1. 仕込み原価とは何か
仕込み原価とは、食材を購入した時点の単価をもとに計算した原価です。 仕入れ価格÷購入量で算出される「購入単価」が基準になります。
例:豚肩ロースブロック
- 購入重量: 2,000g
- 購入金額: 2,400円
- 仕込み原価(購入単価): 2,400円 ÷ 2,000g = 1.2円/g
この1.2円/gが「仕込み原価」です。しかしこれをそのまま1食の計算に使うと、 仕込み中に発生するロス(脂身のトリミング、骨、焼き縮みなど)が無視されます。
2. 提供原価とは何か:歩留まりを反映する
提供原価とは、歩留まり(実際に使える可食部の割合)を考慮した 実効単価をもとに計算した原価です。歩留まり率が低いほど、実効単価は高くなります。
例:豚肩ロースの提供原価計算
- 購入重量: 2,000g / 購入金額: 2,400円
- トリミング後の可食部重量: 1,700g
- 歩留まり率: 1,700 ÷ 2,000 = 85%
- 実効単価(提供原価ベース)= 2,400円 ÷ 1,700g ≒ 1.41円/g
- 1食150g使用の場合: 1.41円 × 150 = 211.5円
- (仕込み原価ベースだと: 1.2円 × 150 = 180円 → 差額31.5円の過小評価)
歩留まりの詳細な計算方法については歩留まり(廃棄率)を考慮した原価計算の方法も参照してください。
3. 作り置き・仕込みバッチの原価配分
バッチ仕込みの原価配分ロジック
大量に仕込んで複数食分に使う食材(ソース・煮込み・たれ等)は、 バッチ全体のコストを使用量(食数、重量)で按分して1食あたりの原価を算出します。
例:肉じゃが(20食分の仕込みバッチ)
- 牛薄切り肉 1,000g × 2.5円/g = 2,500円
- じゃがいも 2,000g × 0.15円/g = 300円
- 玉ねぎ 800g × 0.12円/g = 96円
- 調味料・油 = 200円
- バッチ合計原価: 3,096円
- 提供食数: 20食
- 1食あたり原価: 3,096 ÷ 20 = 154.8円
加熱・調理による重量変化の扱い
肉を焼くと重量が20〜30%程度減少することがあります(水分蒸発、脂の溶け出しなど)。 加熱後の重量で歩留まり計算を行うか、購入重量から加熱後重量を実測して 歩留まり率を更新することで、より正確な提供原価を算出できます。
※ 加熱による重量変化率は食材の種類、部位、調理方法で異なります。自店の実測値で管理することを推奨します。
4. 付け合わせ・ドリンクの原価計上
付け合わせ(ガルニチュール)の按分
メインディッシュに添えるサラダ・スープ・ご飯などは、 メインとは別に原価を計算して1食の提供原価に加算します。 少量の調味料・油脂類も同様に計上することで、真の1食原価が明確になります。
例:ランチセットの提供原価構成
- メイン(豚しょうが焼き): 210円
- ご飯(米 150g): 35円
- 味噌汁(1人前): 25円
- サラダ(付け合わせ): 30円
- 調味料・オイル按分: 15円
- 合計提供原価: 315円
- 販売価格900円の場合 → 原価率: 315 ÷ 900 ≒ 35%
ドリンクの原価と全体原価率への影響
ドリンク(ビール・ジュース・コーヒー等)は一般的に原価率が低く、 フードとセットで計算すると全体原価率を引き下げる効果があります。 ただし、ドリンクのみで原価率改善を狙うと、フード側の提供原価の甘さを見落とします。 フードの提供原価を正確に把握した上で、ドリンクとのセット戦略を組み立てます。
5. 仕込み原価と提供原価の管理をどう統一するか
| 管理項目 | 仕込み原価ベース | 提供原価ベース |
|---|---|---|
| 単価の基準 | 購入単価(仕入れ値÷購入量) | 実効単価(仕入れ値÷可食部重量) |
| 歩留まりの扱い | 考慮なし | 歩留まり率を乗算して算出 |
| 原価率の精度 | 過小評価になりやすい | 実態に近い値が得られる |
| 適した用途 | 仕入れコスト全体の把握 | メニュー別原価率の算出・価格設定 |
実務では、食材の登録時に「購入単価」と「歩留まり率」の両方を記録し、 メニュー原価の計算には提供原価(実効単価)を使うことで管理を統一できます。 専用の原価計算ツールでは、歩留まり率を設定すると自動的に実効単価を計算してくれる 機能を持つものが多く、手作業での計算ミスを防ぐ上でも有効です。
レシピ全体の原価積み上げ方法についてはレシピ原価計算の基本ステップも参照してください。
実務でよくある誤りと対策
誤り①:仕入れ単価をそのままレシピに入力する
最も多いミスです。歩留まりを加味せずに計算すると原価率が実態より低く計算され、 値付けの根拠がずれます。食材ごとに歩留まり率を設定することを習慣化してください。
誤り②:作り置きの原価を大まかに「1食○円」と設定したまま放置する
食材価格が変わっても作り置き原価を更新しないと、ずれが蓄積します。 仕込みバッチの食材単価が変わったタイミングで配分単価も同時に更新する仕組みが必要です。
誤り③:付け合わせや調味料を原価から外す
「どうせ少量だから」と省略すると、メニューが増えるにつれて誤差が大きくなります。 調味料を按分係数として一括計上する方法でも構いませんが、 何らかの形で原価に含めておきます。
まとめ
仕込み原価(購入単価ベース)と提供原価(歩留まり後の実効単価ベース)は異なります。 正確なメニュー原価率を算出するためには、食材の歩留まり率を反映した提供原価を 計算の基準にする必要があります。
作り置きやバッチ仕込みは1食あたりへの配分ロジックを決めて統一管理し、 付け合わせ・ドリンクの原価も含めた「提供1食の完全原価」を把握することで、 価格設定、メニュー改廃の判断精度が上がります。
Genkaで原価計算・食品表示ラベルを自動化
レシピを入力するだけで原価率をリアルタイム計算。 食品表示法準拠のラベルPDFをワンクリックで生成できます。 初月無料トライアルで今すぐお試しいただけます。
無料で始める →