歩留まり(廃棄率)を考慮した原価計算の方法


この記事のポイント

  • 歩留まり率と廃棄率は表裏一体の概念。廃棄部を除いた「可食部」の実効単価を正しく算出することが正確な原価計算の基本
  • 実効単価(可食部1gあたり)= 購入価格 ÷(購入量 × 歩留まり率)で求められる
  • 食材別の標準歩留まりを把握し、ロスを織り込んだ原価設定を行うことで価格決定精度が上がる

歩留まりを無視した原価計算は過小評価になる

飲食店や食品製造で原価計算を行う際、多くの初心者が犯す典型的な誤りが「廃棄部を無視した原価計算」です。 例えばブロッコリーを1房300g購入して200円だとすると、単純計算では1gあたり0.67円となります。 しかし実際には茎、芯、葉の廃棄部があり、使える可食部は購入量より少なくなります。 廃棄率を考慮しない原価計算は実際より低い原価を計上することになり、価格設定が不正確になります。

1. 歩留まり率と廃棄率の定義

歩留まり率と廃棄率は、同じものを裏表から呼んでいるだけです。

用語定義計算式
歩留まり率購入量のうち実際に使える(可食部)の割合可食部重量 ÷ 購入重量 × 100(%)
廃棄率購入量のうち使えない部分(廃棄部)の割合廃棄部重量 ÷ 購入重量 × 100(%)

歩留まり率と廃棄率の合計は必ず100%になります。

歩留まり率(%)+ 廃棄率(%)= 100%

例:廃棄率30% → 歩留まり率70%

廃棄率は文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」にも各食品について収載されており、 栄養計算でも使用される標準的な指標です。詳しくは日本食品標準成分表の使い方を参照してください。

2. 実効原価(可食部単価)の計算方法

廃棄率を考慮した「実効単価」の計算式は次のとおりです。

実効単価の計算式

実効単価(円/g)= 購入価格(円)÷ 購入重量(g)÷(歩留まり率 ÷ 100)

または

実効単価(円/g)= 購入単価(円/g)÷(歩留まり率 ÷ 100)

計算例:にんじん(廃棄率3%)

  • 購入量:500g 購入価格:100円
  • 購入単価:100 ÷ 500 = 0.20円/g
  • 廃棄率:3% → 歩留まり率:97%
  • 実効単価:0.20 ÷ 0.97 ≒ 0.206円/g(可食部)
  • 使用量80gの実効原価:0.206 × 80 ≒ 16.5円
  • 廃棄率無視の場合:0.20 × 80 = 16.0円(0.5円の過小評価)

計算例:魚(廃棄率40%)

  • 購入量:500g(丸魚) 購入価格:500円
  • 購入単価:500 ÷ 500 = 1.00円/g
  • 廃棄率:40% → 歩留まり率:60%
  • 実効単価:1.00 ÷ 0.60 ≒ 1.67円/g(可食部)
  • 使用量150g(可食部)の実効原価:1.67 × 150 ≒ 250円
  • 廃棄率無視の場合:1.00 × 150 = 150円(100円もの過小評価)

※ 上記は説明用の仮例です。実際の廃棄率は食品、品種、処理方法によって異なります。

3. 食材別の標準廃棄率の目安

廃棄率は食材の種類、調理方法によって大きく異なります。 文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)には各食品の廃棄率が収載されており、実務の参考になります。 以下は一般的な目安です(実際の値は必ず成分表または仕入れ食材の実測で確認してください)。

食材カテゴリ廃棄率の一般的な目安廃棄部位
根菜類(にんじん・大根)約3〜10%皮・頭部
葉野菜(ほうれん草・小松菜)約10〜15%根・黄化した葉
ブロッコリー・カリフラワー約35〜50%茎・芯・葉
肉類(骨なし部位)約3〜10%筋・脂身・皮
魚(丸魚)約35〜50%頭・骨・内臓・皮
魚(切り身)約0〜5%骨・皮
果物(皮付き)約10〜30%皮・種・芯
鶏卵約13%

※ 上記は一般的な目安です。同じ食材でも品種、サイズ、産地、加工状態によって廃棄率は変動します。正確な計算には実測または食品成分表の値を使用してください。

4. 調理ロスも原価に織り込む

廃棄率(仕込み前のロス)のほかに、調理ロス(加熱、水分蒸発、煮詰め等)も原価計算で考慮する必要があります。

例えば肉類を加熱すると水分、脂分が抜け重量が減少します。 この「加熱減率」も踏まえると、より精密な原価計算が可能になります。

例:鶏もも肉を焼いた場合

  • 購入量(皮なし):200g 購入価格:200円(購入単価:1.0円/g)
  • 廃棄率:約3%(筋など)→ 可食部:194g
  • 加熱後重量変化率:約83%(仮例。実際は食品成分表で確認)
  • 加熱後可食部:194 × 0.83 ≒ 161g
  • 加熱後の実効単価:200円 ÷ 161g ≒ 1.24円/g(調理後)

※ 加熱後重量変化率は食品成分表(八訂)に収載されている値を参照してください。上記は説明用の仮例です。

5. 歩留まりを原価設定に活かす実務ポイント

仕込み段階で歩留まりを計測する

同じ食材でも仕入れ先、季節、品質によって廃棄率が変動します。 実際に仕込んだ際の歩留まりを記録し、自店の実績値を蓄積することで精度の高い原価計算が可能になります。 特に廃棄率が高い食材(魚、甲殻類など)は1〜2%の誤差が原価に大きく影響します。

廃棄部を副産物として活用する

魚のあらを出汁に使う、野菜の端材をスープに活用するなど、廃棄予定部位を「使える素材」として調理に取り込むことで、 実質的な歩留まりを高め原価を下げることができます。 廃棄ロスの削減は食品ロス管理とも深く関わります。詳しくは飲食店のロス管理|食品ロス・廃棄ロスの削減方法とロス率の下げ方で解説しています。

仕入れ形態の選択に歩留まりを活用する

同じ食材を「丸魚(廃棄率高)」で買うか「切り身(廃棄率低)」で買うかを選ぶ際、 購入価格だけで判断すると誤ることがあります。 実効単価ベースで比較することで、実際に安い仕入れ形態を選択できます。

例:丸魚と切り身の実効単価比較(仮例)

  • 丸魚:1kg 800円、廃棄率45% → 実効単価:800 ÷ 1000 ÷ 0.55 ≒ 1.45円/g
  • 切り身:1kg 1,200円、廃棄率5% → 実効単価:1,200 ÷ 1000 ÷ 0.95 ≒ 1.26円/g
  • → 切り身の方が購入価格は高いが、実効単価は安い

※ 上記は説明用の仮例です。実際の値は食材・仕入れ先によって異なります。

よくある誤り

  • 廃棄率を無視して購入重量そのままで原価計算する(原価の過小評価)
  • 標準的な廃棄率のみ使用し、実際の仕込みロスとのずれを把握しない
  • 仕入れ形態の変更時に廃棄率の変化を反映しない
  • 加熱ロス(重量変化)と廃棄率(仕込みロス)を混同する

まとめ

歩留まり(廃棄率)を考慮した原価計算の基本は「実効単価 = 購入単価 ÷ 歩留まり率」という計算式です。 廃棄率の高い食材(魚、甲殻類、廃棄部の多い野菜)ほど、廃棄率を無視した場合の誤差が大きくなります。

実務では標準的な廃棄率(食品成分表収載値)を参照しながら、自店の実績値で補正していくことが精度向上のポイントです。 廃棄部の副産物活用や仕入れ形態の最適化と組み合わせることで、原価管理の精度とコスト効率を同時に高めることができます。

レシピ全体の原価積み上げ方法についてはレシピ原価計算の基本ステップも参照してください。


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