乳アレルゲン表示の実務|「乳成分」表記と乳等の特殊ルール


この記事の要点(3点)

  • ・ 乳のアレルゲン表示は「乳成分を含む」という特有の表記を使う。特定原材料の中で最も表記ルールが特殊
  • ・ バター、チーズ、ホエイ、カゼイン、乳糖など乳由来素材の広がりが見落としの温床。乳糖は医薬品にも使われるほど広く流通
  • ・ 「乳化剤」「乳酸菌」「乳酸カルシウム」は名前に乳が付くが乳由来とは限らない。誤表示と過剰表示の両方に注意

根拠: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)、アレルゲン表示に関する消費者庁通知

1. なぜ「乳」ではなく「乳成分」なのか

特定原材料の表示で、卵は「卵を含む」、小麦は「小麦を含む」と書くのに、 乳だけは「乳成分を含む」と書きます。 これは「乳」の一文字では、 乳等省令の「乳」(牛乳などの飲用乳)と紛らわしいための整理です。 細かい話に見えますが、表示監視で指摘されやすい定番ポイントであり、 「(一部に乳を含む)」という表記は不備とされます。

乳等省令という別体系との関係は乳・乳製品の表示特例で解説しています。 アレルゲンとしての乳は、この体系の上に乗る別レイヤーだと理解してください。

2. 乳由来素材の広がり

分類乳由来の素材
主要乳製品バター、チーズ、生クリーム、ヨーグルト、練乳、脱脂粉乳、全粉乳
加工素材ホエイ(乳清)、カゼイン、乳たんぱく、バターオイル、乳糖
意外な使用先ハム・ソーセージ(結着材のカゼイン)、ポテトチップスの調味粉、カレールウ、マーガリン

「乳製品は使っていない」つもりの惣菜や菓子に、 ルウやマーガリン、調味シーズニング経由で乳成分が入る例は多く、 規格書確認なしの「使っていないはず」は通用しません。 仕入れ材料の規格書からの転記が唯一の確実な方法です。

3. 「乳」が付くのに乳由来でないもの

逆方向の誤りにも注意が必要です。 名前に「乳」が付いても乳由来とは限らない素材があります。

  • 乳化剤:大豆レシチン等の植物由来が多い(乳由来の場合もあるため規格書確認)
  • 乳酸菌:菌そのものは乳由来ではない。培地に乳成分を使う場合があるため製品による
  • 乳酸、乳酸カルシウム:発酵由来の酸で乳由来ではない
  • カカオバター:カカオ由来の油脂で乳ではない

乳由来でないものに「乳成分を含む」と書く過剰表示は、 乳アレルギーの消費者の選択肢を不必要に奪います。 過少も過剰も避け、規格書の由来情報に基づいて判定してください。

4. 実務のポイント

代替表記の扱い

「牛乳」「チーズ」「バター」のように乳成分を含むことが明らかな表記は、 代替表記として個別のアレルゲン表示を省略できる場合があります。 ただし一括表示方式を採るなら、末尾の「(一部に乳成分を含む)」に まとめて記載するのが分かりやすい実務です。

乳アレルギーと乳糖不耐症の区別

乳糖不耐症(乳糖を分解できない体質)と乳アレルギー(乳たんぱくへの免疫反応)は 別の現象ですが、消費者からの問い合わせでは混在します。 「乳糖は入っていますか」という質問には、 規格書に基づいて事実を答えられる体制を整えてください。 アレルギー対応をうたわず、事実情報を提供するのが小規模事業者の安全な立ち位置です。

よくある質問

Q. 「(一部に乳を含む)」と書いてしまいました。回収が必要ですか?

A. 「乳成分」が正しい表記ですが、消費者への危害性の観点では 乳の含有自体は伝わっています。保健所に相談の上、 ラベルの是正時期を判断するのが実務的な対応です。 アレルゲンの欠落(書き漏れ)とは深刻度が異なります。

Q. 乳酸菌飲料の「乳」はアレルゲン表示が必要ですか?

A. 乳酸菌飲料は通常、乳(脱脂粉乳等)を原料とするため乳成分の表示対象です。 菌だけでなく飲料全体の原料構成で判断してください。

まとめ

乳アレルゲンの実務は、「乳成分」という特有表記、 ルウやハムまで広がる乳由来素材の追跡、 「乳」の字に惑わされない由来判定の3点です。 規格書の由来情報を根拠に、過少でも過剰でもない表示を作ってください。

アレルゲン表示の全体像はアレルゲン表示完全ガイドをご参照ください。

参照法令: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)、食品表示基準について(消費者庁通知)


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