日本食品標準成分表の使い方|栄養計算の基礎データ参照手順


この記事のポイント

  • 「日本食品標準成分表(八訂)」は文部科学省が公開する公的データベースで、栄養計算の一次資料として広く利用されている
  • 収載値はすべて「可食部100gあたり」で統一されており、使用量に比例して換算する
  • 調理による重量変化・欠測値の扱いを正しく理解することで、より精度の高い栄養計算が可能になる

日本食品標準成分表とは

「日本食品標準成分表」は、文部科学省(科学技術・学術審議会資源調査分科会)が定期的に改訂・公開している食品成分のデータベースです。 現行版は八訂(2020年版)であり、その後も追補が刊行されています。 収載食品数は2,478食品(八訂本表)に及び、エネルギー・水分・たんぱく質・脂質・炭水化物・灰分・ミネラル・ビタミン等、多数の成分が掲載されています。

食品表示法に基づく栄養成分表示を行う際、成分値の根拠として広く参照されており、専用SaaSや栄養計算ソフトの多くがこのデータベースをベースに成分値を内蔵しています。 文部科学省の公式Webサイト(食品成分データベース)から無料で検索・ダウンロードが可能です。

1. 成分表の基本構造:18食品群と食品番号

成分表は食品を18の食品群に分類しています。主な食品群は以下のとおりです。

食品群番号食品群名収載例
1群穀類薄力粉・強力粉・精白米・そば・うどん
2群いも及びでん粉類じゃがいも・さつまいも・片栗粉
3群砂糖及び甘味類上白糖・グラニュー糖・はちみつ
4群豆類大豆・絹ごし豆腐・木綿豆腐
5群種実類アーモンド・ごま・くるみ
6群野菜類にんじん・玉ねぎ・ほうれん草
7群果実類りんご・バナナ・レモン
11群肉類鶏もも肉・豚バラ肉・牛ロース
12群卵類全卵・卵白・卵黄
13群乳類普通牛乳・生クリーム・バター
17群調味料及び香辛料類しょうゆ・みりん・みそ

※ 食品群は全18群。上記は代表的な群のみ抜粋。

各食品には「食品番号」が付与されており、同一食材でも調理法・品種によって異なる食品番号が割り当てられています。 例えば「鶏もも肉」でも「皮なし・生」「皮つき・生」「皮なし・焼き」などがそれぞれ個別の行として収載されています。 レシピの調理工程に合わせた食品番号を選ぶことが精度向上の基本です。

2. 収載成分の種類

八訂では収載成分が大幅に拡充されました。食品表示で義務表示となる5成分(熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量)はすべて収載されています。

成分カテゴリ主な収載成分
一般成分水分・たんぱく質(アミノ酸組成から計算)・脂質・炭水化物・灰分
エネルギーエネルギー(kcal)・エネルギー(kJ)
ミネラルナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄・亜鉛・銅・マンガン等
ビタミンビタミンA(レチノール・β-カロテン)・D・E・K・B1・B2・B6・B12・葉酸・C等
脂肪酸飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸(n-3系・n-6系)
炭水化物詳細糖質・食物繊維(水溶性・不溶性)・糖アルコール・有機酸

食品表示法の義務5成分を算出する場合は、一般成分・エネルギー・ミネラル(ナトリウム)が主な参照対象です。 ナトリウム量(mg)から食塩相当量(g)を算出する式は以下のとおりです。

食塩相当量(g)= ナトリウム量(mg)× 2.54 ÷ 1000

例:ナトリウム 400mg → 400 × 2.54 ÷ 1000 ≒ 1.016g

3. 「可食部100gあたり」の意味と比例計算

成分表の数値はすべて可食部100gあたりの値として統一されています。 「可食部」とは、廃棄部(皮・種・骨・ヘタ等)を除いた実際に食べられる部分を指します。

実際の計算では、可食部の使用量に応じて比例計算します。

比例計算の基本式

成分量 = 成分表の100g値 × 使用量(g)÷ 100


例:ある食品を150g使用する場合(100gあたりたんぱく質A g・脂質B gと仮定)

  • たんぱく質:A × 150 ÷ 100 = A × 1.5(g)
  • 脂質:B × 150 ÷ 100 = B × 1.5(g)

※ 実際の計算には食品成分データベースで当該食品番号の値を確認してください。

複数の原材料を使うレシピでは、各原材料についてこの計算を行い、成分ごとに合算します。 合計値を完成品の総重量で除すことで、100gあたりまたは1食あたりの栄養成分値が算出できます。

4. 廃棄率と可食部重量の計算

成分表には各食品の廃棄率(%)も収載されています。廃棄率を使うと、購入量(廃棄込み)から可食部重量を計算できます。

可食部重量(g)= 購入量(g)×(100 − 廃棄率)÷ 100


例:廃棄率3%の野菜を200g購入した場合

可食部 = 200 × (100 − 3) ÷ 100 = 194g

※ 廃棄率は食品成分表に記載された値を参照してください。

廃棄率は「皮むき前の状態(生の廃棄率)」が基準です。購入した重量から廃棄部を差し引いた可食部重量に対して成分計算を行います。 成分表の数値は「廃棄部を除いた可食部」の値であるため、廃棄部込みの重量をそのまま使って計算しないよう注意が必要です。

廃棄率は栄養計算だけの話ではありません。原価計算でも「歩留まり」として同じ数値が使われます。 歩留まり計算と原価への影響については歩留まり(廃棄率)を考慮した原価計算の方法で詳しく解説しています。

5. 調理による重量変化と成分値の選択

成分表では、生の状態の値と調理後の値が別々に収載されている食品が多くあります。 調理により食品は水分を失ったり(加熱・乾燥)、水分を吸収したり(茹で・蒸し)するため、 調理前後で重量が変化します。成分表にはこの「重量変化率(%)」も収載されています。

食品・調理方法重量変化の傾向成分値の選択方針
肉類(焼き・炒め)減少(水分・脂が抜ける)「焼き」「炒め」の成分値を優先
野菜(茹で)食品によって異なる「茹で」の成分値を優先
乾麺(茹で)増加(水を吸収)「茹で」の成分値を優先
米(精白米・炊き)増加(約2〜2.3倍)「飯(めし)」の成分値を優先
野菜(生)変化なし「生」の成分値を使用

調理後の状態に対応した成分値が成分表に収載されている場合は、調理後の重量と調理後の成分値を組み合わせて使います。 収載されていない場合は生の成分値と重量変化率を使って推定します。

加工品・調味料の扱い

醤油、みりん、マヨネーズ、ケチャップなどの市販加工品については、 成分表の収載値を使う方法と、メーカーの製品ラベルに記載された栄養成分値を使う方法があります。メーカー表示値が入手できる場合はメーカー値を優先することが推奨されます。 実際の使用製品に近い値を反映しているためです。

6. 欠測値記号(「−」「(0)」「Tr」)の扱い

成分表では、測定が行われていないか、データが得られていない場合に特定の記号が使われます。 これらを正しく理解しないと計算を誤る可能性があります。

記号意味計算上の扱い
0含まれていないか、最小記載量の1/10(十分の一)未満(又は検出されなかった)0として計算
Tr(微量)最小記載量の1/10以上、5/10未満に含まれる微量実務上は0に近い値として扱うことが多い
(0)含まれていないと推定されるが未測定0として計算(注記を確認)
−(ダッシュ)未測定または測定値が不明計算対象外(類似食品の値を参照)

「−」の場合は、類似する食品の収載値を参照するか、代替食品で計算し「推定値」として扱うのが実務上の対応です。 重要な成分に「−」が多い食品では、検査機関による実測も検討してください。

7. 食品成分データベース(Web版)の使い方とよくある誤り

文部科学省は成分表のデータをWebで無料検索できる「食品成分データベース」を公開しています。 検索のコツをいくつか紹介します。

  • 食品名で検索し、複数の候補から品種・調理法が一致するものを選択する
  • 「薄力粉」ではなく「小麦粉 薄力粉」と入力すると候補が絞りやすい
  • 「生」「焼き」「茹で」「炒め」など調理状態が明示されているものを選ぶ
  • 選んだ食品の「廃棄率」「重量変化率」も合わせて確認する
  • CSVダウンロード機能を活用してスプレッドシートでの管理に役立てる

よくある誤り

  • 廃棄部込みの重量に成分表の100gあたり値を掛けてしまう(過大計算)
  • 調理後の重量変化を無視して生の重量で計算する(値のずれが生じる)
  • 成分表の値は「平均的な値」であり産地・季節・品種によって実際の値は異なることを忘れる
  • 食品表示基準では算出値の誤差は実測値の±20%以内が許容範囲の目安とされている点を理解していない

栄養計算を効率化したい場合は、成分データベースを内蔵した専用ツールを利用すると、 食品名を入力するだけで成分値が引用され、レシピ全体の合計値が自動計算されます。 栄養成分表示の計算手順全体については栄養成分表示の計算方法:食品成分データベースを使った正確な算出手順も参照してください。

まとめ

日本食品標準成分表(八訂)は、栄養計算の一次資料として信頼性が高く、食品表示法対応の栄養成分値算出に広く利用されています。 基本的な使い方は「可食部100gあたりの値に、使用量÷100を掛けて比例計算する」ことです。

正確な計算は、①廃棄率を踏まえた可食部重量の算出、②調理後の成分値選択(生か調理後か)、③欠測値記号の正しい理解、という3点で決まります。 加工品についてはメーカーの表示値を優先的に使用することで、精度を高めることができます。


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