コーヒー焙煎所の開業|豆売りビジネスの原価と焙煎ロス
この記事の要点(3点)
- ・ 焙煎豆の原価は生豆価格÷焙煎歩留まり(焙煎で重量が1〜2割減る)で計算する。ハンドピックの欠点豆除去もロスに含む
- ・ 開業は営業届出で始めやすく、設備の中心は焙煎機(小型で数十万〜)。煙と匂いの近隣対策が立地の実質条件
- ・ 販路は店頭・EC・卸(カフェへの豆卸)の三本柱。卸は安定収益だが掛率設計が必要
※ 生豆相場は市況・為替で変動します。数値は一般的な目安です。
1. 焙煎豆の原価計算: 目減りを織り込む
コーヒー生豆は焙煎すると水分が抜けて軽くなります。 焙煎度により1〜2割の重量減(焙煎ロス)が生じ、 さらに焙煎前後のハンドピック(欠点豆の除去)でも目減りします。 つまり販売する焙煎豆100gの原価は、 生豆100gの価格ではなく「生豆115〜125g分の価格」で計算します。
焙煎豆原価の骨格
焙煎豆100gの生豆原価 = 生豆単価 × (100 ÷ 歩留まり%)
例: 歩留まり85%なら、生豆117.6g分の価格が原価
ここにガス・電気代(焙煎機の燃料)、包材(袋、バルブ、ラベル)を 載せたものが商品原価です。 焙煎バッチごとの投入量と焼き上がり量の記録が、 自店の歩留まりデータになります。 この構造は歩留まり率を考慮した原価計算の応用です。
2. 開業の制度と設備
焙煎豆の製造販売は多くの自治体で営業届出で始められます (コーヒー豆・粉の表示参照)。制度のハードルが低い分、実質的な開業条件は設備と立地です。
- 焙煎機:小型(1kg釜)で数十万円から、中型で数百万円。 生産能力(1日に焼ける量)が事業規模の上限を決める
- 煙・匂い対策:焙煎の煙と香りは近隣トラブルの火種。 排気の処理(アフターバーナー等)と立地選定が実質的な参入条件
- 生豆の保管:麻袋単位の仕入れは保管スペースと品質管理(湿度)が必要
3. 三本柱の販路設計
- 店頭:試飲とコミュニケーションで単価とリピートを作る。 カフェ併設ならカフェの原価設計の物販の柱になる
- EC:定期便(サブスク)が焙煎計画を安定させる。 焙煎日発送の鮮度訴求が個人ロースターの武器
- 卸:カフェ・飲食店への豆卸は安定収益源。 掛率(上代の60〜70%程度)で利益が出る原価構造と、 安定供給の焙煎能力が条件。卸販売の実務参照
生豆相場は国際市況と為替で動くため、 仕入れ値の変動を記録し、価格改定のルール (仕入れ〇%上昇で売価見直し等)を決めておくと判断が速くなります。食材価格変動への対応をご参照ください。
4. 品質管理と表示
焙煎豆の品質管理は、焙煎プロファイル(温度曲線)の記録と再現、 カッピング(味の確認)、包材による酸化防止で構成されます。 表示面では生豆生産国名の記載、ブレンド名のルール、 賞味期限の設定(風味の官能確認ベース)が実務です。 カフェインレス豆を扱うならカフェインの表示で扱った除去率の裏付けも確認してください。 焙煎度ごとの歩留まりの違い(深煎りほど重量減が大きい)も 原価表に反映し、深煎り商品の価格設定に織り込むのが丁寧な設計です。
よくある質問
Q. 焙煎豆の粗利はどのくらい取れますか?
A. スペシャルティ系の小売では、生豆原価・焙煎ロス・包材を載せても 粗利率60%前後を確保できる価格設定が一般的です。 卸は掛率分だけ薄くなるため、小売と卸の構成比が全体の利益率を決めます。
Q. 自家焙煎とカフェ営業は同時に始めるべきですか?
A. 両方は設備も許可も労働も倍になります。 豆売り専業で焙煎技術と顧客を作ってからカフェ併設に進む、 またはその逆と、段階を分ける方が資金繰りは安全です。
まとめ
焙煎所の経営は、焙煎ロスを織り込んだ原価計算、 煙対策を含む立地と設備の選定、店頭・EC・卸の三本柱の設計で組み立てます。 制度の入口は届出で軽く、勝負は品質の再現性と販路づくりにあります。 バッチごとの記録を、原価と品質の両方の土台にしてください。
豆の表示実務はコーヒー豆・粉の食品表示ラベルの書き方をご参照ください。
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