ロット番号と製造所固有記号|トレーサビリティと表示の実務
この記事の要点(3点)
- ・ ロット番号の表示は一般食品では義務ではないが、回収(リコール)時に「どこまで回収するか」を決める生命線になる
- ・ 製造所固有記号は、販売者表示とセットで製造所の所在地表示を代替する制度。消費者庁への届出が必要で、原則2工場以上での製造が条件
- ・ 小規模事業者は製造日や期限表示をロット代わりにする運用が現実的。製造記録と紐づけば機能する
根拠: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)、食品衛生法(自主回収届出制度)
1. ロットは「回収の単位」である
異物混入の連絡が1件入ったとき、 回収すべきなのは全商品か、その日の製造分か、その釜の分か。 この問いに答えるのがロット管理です。 ロット番号自体の表示は一般食品では義務化されていませんが、 ロットを特定できない事業者は、事故時に「全量回収」しか選択肢がなくなります。
小規模工房にとって現実的なのは、 期限表示(消費期限、賞味期限の日付)を実質のロット番号として使う運用です。 「賞味期限2026.10.18の商品=10月18日を期限とする製造日のロット」と 製造記録で紐づけておけば、 専用のロット印字システムがなくても回収範囲を特定できます。 条件は、同じ期限の商品を複数回に分けて作らないこと、 または分ける場合は記号(A/B等)を付けることです。
2. 製造所固有記号の制度
一括表示の製造者欄には、製造所の所在地と製造者の氏名を書くのが原則です。 この原則を販売者主導の商品で緩和するのが製造所固有記号です。 「販売者〇〇株式会社+固有記号」の形で、 実際の製造所の表示を記号で代替できます。
利用には消費者庁への届出が必要で、 2015年の制度改正により原則として同一商品を2以上の工場で製造する場合に 限定されました。1工場でしか作らない商品は、原則通り製造所を表示します。 また、固有記号を使う場合は、消費者からの問い合わせに応じて 製造所情報を回答する体制(電話番号やウェブサイト等の記載)が必要です。 OEM商品の表示との関係は製造者・販売者・加工者表示の使い分けで解説しています。
3. 回収制度との接続
2021年6月から、食品衛生法違反(またはそのおそれ)による自主回収は行政への届出が義務になりました。 届出にはロットの特定(対象商品、期限表示の範囲、販売期間等)が求められます。 つまりロット管理は、任意の品質管理から 「回収義務を果たすための前提条件」に格上げされたと考えるべきです。
製造記録(日付、配合、担当、販売先)と表示(期限、記号)が紐づいていれば、 回収範囲を最小に絞り込めます。 記録がなければ、疑わしきは全て回収するしかありません。 この差は事業の存続に直結します。 アレルゲン表示の誤りは回収事由の代表例で、表示の正確さの重要性はアレルゲン表示完全ガイドをご参照ください。
4. 小規模事業者のロット運用テンプレート
- 製造記録:日付、商品、配合ロット(使った原料の仕入れロット)、製造数、担当者を1行で記録
- 表示との紐づけ:期限表示の日付を製造記録から引けるようにする。1日複数バッチなら記号を付す
- 原料側の記録:仕入れ原料の賞味期限やロットを受入時に記録。原料事故(回収対象原料の使用)に遡れるようにする
- 販売先の記録:卸先、イベント販売日、EC出荷を記録。回収連絡の宛先リストになる
この4点はHACCPの記録管理とも重なります。 衛生管理計画の記録様式に組み込めば、二重の手間になりません。
よくある質問
Q. ロット番号を表示していない商品は違反ですか?
A. 一般食品では違反ではありません。ただし回収時のロット特定手段は必要です。 期限表示と製造記録の紐づけで代替するのが小規模事業者の現実解です。
Q. 製造所固有記号は誰でも使えますか?
A. 消費者庁への届出が必要で、原則として同一商品を2以上の工場で製造する場合に限られます。 1工場製造の小規模事業者は原則通り製造所を表示します。
まとめ
ロット管理は表示義務の問題ではなく、回収義務を果たせるかの問題です。 期限表示と製造記録の紐づけという最小構成から始め、 原料側と販売先の記録まで揃えれば、小規模でも回収範囲を絞り込める体制になります。 製造所固有記号は届出制の代替表示制度として、条件に該当する場合だけ使ってください。
表示作成の全体は食品表示ラベルの作り方をご参照ください。
参照法令: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)、食品衛生法
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