ランチとディナーの価格設計|同じ厨房で二つの商売をする
この記事の要点(3点)
- ・ ランチとディナーは同じ厨房で行う別の商売。ランチ=回転と原価率高め、ディナー=単価と粗利という役割分担で設計する
- ・ ランチの赤字許容には条件がある。「ディナー集客への投資」は、実際にディナーへ転換している場合のみ正当化される
- ・ 共通の固定費(家賃・基本人員)は営業時間帯で按分して時間帯別の損益を見る。どちらが稼いでいるかを数字で知る
※ 数値は一般的な目安です。立地・業態により変わります。
1. 二毛作の構造を理解する
昼は1000円のランチ、夜は5000円のコース。 同じ店の中に、客層も価格も回転も違う二つの商売が同居しています。 この二毛作を成立させる設計の軸は、役割分担です。
- ランチの役割:回転で売上を作り、店の認知を広げる。 原価率は高め(35〜40%)でも回転数と提供速度で成立させる
- ディナーの役割:客単価と粗利で利益を作る。 ドリンクとコースの構成で客単価を設計する
役割が違えば、値付けの論理も違います。 ランチを「ディナーの半額版」として作ると、 原価も手間も中途半端になりがちです。 ランチ専用の型(提供5分、品数を絞る、セット固定)を 別の商品として設計してください。
2. 「ランチは広告費」論の検証
「ランチは儲からなくても、ディナーの宣伝になるから」。 この定番の論理は、条件付きでしか成立しません。 条件とは、ランチ客が実際にディナーに来ているかです。
検証は難しくありません。 ディナーの新規客に「当店を知ったきっかけ」を聞く、 ランチ配布のディナー割引券の回収率を測る。 転換が実際に起こっているなら、ランチの薄利は広告費として正当です。 起こっていないなら、ランチは独立採算で成立させるべき商売であり、 値上げ・原価見直し・営業時間の再考(ランチをやめる選択を含む)の 対象になります。 仕込みと営業の労働時間まで含めた 時間帯別損益で判断してください。
3. 時間帯別損益の作り方
- 売上と原価:POSで時間帯別に分ける(ランチ帯/ディナー帯)
- 人件費:シフト表から時間帯別に集計。仕込み時間はランチ・ディナーの提供数比で按分
- 固定費:家賃・光熱基本料は営業時間の比で按分(簡便法)
- 時間帯別の利益:各時間帯の限界利益と、固定費按分後の営業利益を見る
この計算はエクセルで十分作れます。 精密さより、「ランチとディナーのどちらが稼いでいるか」を 初めて数字で見ることに価値があります。 多くの店で、感覚と数字は食い違います。 損益の基礎は損益分岐点の計算をご参照ください。
4. ランチ帯の改善レバー
- 回転の物理限界を上げる:提供時間の短縮(仕込みの事前化)、券売機・事前決済、相席・カウンター活用
- 実質単価を上げる:+200円の小鉢セット、食後のデザート・コーヒー、テイクアウト併売
- 原価の構造化:日替わりを「安い日の食材」で組む仕入れ連動設計。食材価格変動への対応参照
- ディナー転換の導線:夜メニューの卓上提示、ディナー予約特典、SNSフォロー
よくある質問
Q. ランチの原価率は何%まで許容できますか?
A. 回転数次第です。原価率40%でも提供5分×高回転なら時間あたり粗利は十分になり得ます。 原価率単独でなく「ランチ帯の時間あたり粗利」で判断してください。
Q. ランチとディナーで同じ料理の価格を変えてもいいですか?
A. 問題ありません。量・付け合わせ・提供形態を変えて別商品として設計するのが一般的です。 全く同じ内容での価格差は客の不公平感を生むため、違いを作るのが実務です。
まとめ
ランチとディナーの価格設計は、二つの商売の役割分担を決め、 時間帯別損益で実態を可視化することから始まります。 「ランチは広告費」は転換データがあるときだけの論理です。 どちらの時間帯も、それぞれの型で稼げる設計を目指してください。
メニュー構成の分析はメニューエンジニアリングとABC分析をご参照ください。
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