メニュー価格の決め方|原価・相場・価値の三角測量


この記事の要点(3点)

  • ・ 値付けの3つの基準: 原価積み上げ(下限を決める)、競合相場(上限の目安)、提供価値(上限を破る力)。三角測量で決める
  • ・ 原価率の逆算(原価÷目標原価率)は出発点であってゴールではない。全品一律の原価率は、メニューの役割分担を殺す
  • ・ 価格の見え方(端数、メニュー表の並び、松竹梅)は同じ価格でも選ばれ方を変える。決めた価格を「どう見せるか」まで設計する

※ 手法は一般的な整理です。業態・立地により重み付けは変わります。

1. 三角測量: 3つの基準を全部使う

値付けの失敗は、たいてい一つの基準だけで決めることから起こります。 原価だけで決めれば相場から浮き、相場だけで決めれば利益が出ず、 感覚だけで決めれば根拠を失う。 実務は3つの基準の三角測量です。

  • 原価積み上げ(下限):材料原価÷目標原価率で「これ以下では売れない」線を引く。 原価の出し方はレシピ原価計算の基礎参照
  • 競合相場(現実の枠):商圏の同業態・同カテゴリの価格帯。 客はあなたの原価を知らないが、相場は知っている
  • 提供価値(枠を破る力):食材の物語、体験、希少性。 相場を超える価格は、価値の伝達(メニュー表現、接客、盛り付け)が支える

2. 一律原価率をやめる

「全品原価率30%」という決め方は、計算は楽ですが メニューの戦略性を殺します。 実務は役割別の原価率設計です。

役割原価率の考え方
看板(集客)高め(35〜45%)を許容し、価格以上の体験で来店動機を作る
定番(ボリューム)標準(28〜33%)。出数が多いため管理精度を最優先
利益(収益源)低め(15〜25%)。ドリンク・サイド・トッピングが担う

管理するのは全体のミックス原価率(出数構成での加重平均)です。 ミックスの考え方はカフェの原価設計、構成の分析はメニューエンジニアリングとABC分析をご参照ください。

3. 価格の見せ方の設計

  • 端数の設計:980円と1000円の心理差は実在するが、 端数を使いすぎると安売り感が出る。価格帯(大衆か上質か)に合わせて統一する
  • 松竹梅:3段階の選択肢は中間を選ばせる(極端回避性)。 竹に目標客単価を置く設計は客単価アップの考え方の定石
  • メニュー表の並びと写真:最初と最後に置いた品、写真付きの品は選ばれやすい。 売りたい品(利益貢献の高い品)に視線が集まる配置にする
  • 「円」表記と通貨記号:価格の存在感を下げる表記(980 のみ等)は 高価格帯レストランの定番手法

いずれも、事実と異なる見せ方(実態のない二重価格等)は 景品表示法の問題になります。見せ方の工夫は事実の範囲で行ってください。

4. 値付けは一度きりでなく運用

決めた価格は、原価の変動と客の反応で定期的に見直します。 仕入れ値の記録(食材価格変動への対応)が値上げ判断のトリガーを与え、 出数の変化が価格弾力性(値上げでどれだけ客が減るか)の実データになります。 値上げの実行手順は値上げの進め方をご参照ください。 新メニューの価格は新メニューの原価シミュレーションで発売前に検証する運用が理想です。

よくある質問

Q. 開業時、相場データはどう集めますか?

A. 商圏の競合5〜10店の主要メニュー価格を実地で記録するのが基本です。 グルメサイトのメニュー情報も補助になります。 「同じ客層が比べる店」を選んで集めてください。

Q. 原価率が高すぎる看板メニューはやめるべきですか?

A. 役割で判断してください。集客と話題を作っているなら、 単品の原価率でなく「その品が連れてくる客の総粗利」で評価します。 誰も注文しない高原価品だけが、見直しの対象です。

まとめ

メニュー価格は、原価の下限、相場の枠、価値の突破力という 三角測量で決め、役割別の原価率とミックス管理で運用します。 決めた価格の見せ方まで設計し、 仕入れと出数のデータで定期的に見直す。 値付けは一度の決断でなく、続く運用です。

原価と粗利の基礎は原価率と粗利率の違いをご参照ください。


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