レトルト食品の食品表示ラベルの書き方|密封包装食品の規格と表示
この記事の要点(3点)
- ・ レトルトパウチ食品は容器包装詰加圧加熱殺菌食品として食品衛生法の規格基準(120℃4分相当等)を満たす必要がある
- ・ 小規模事業者の自前製造は設備面で非現実的なことが多く、OEM委託+販売者表示が主流の参入ルート
- ・ 常温で長期保存できる分、「保存料不使用でも日持ちする理由」の説明が消費者の誤解を防ぐ表示上の工夫になる
根拠: 食品衛生法(容器包装詰加圧加熱殺菌食品の規格基準)、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)
1. 店のカレーをレトルトにするという夢
「うちのカレーをレトルトにして全国に売りたい」。 飲食店の物販相談で最も多い希望の一つです。 そして、最初に知っておくべき現実は、 レトルト食品が食品製造の中でも特に規格の厳しい分野だということです。
常温で1年以上保存できるレトルト食品は、 ボツリヌス菌の芽胞まで殺す加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)が前提です。 食品衛生法には容器包装詰加圧加熱殺菌食品の規格基準があり、 中心温度120℃で4分相当以上の加熱等の条件が定められています。 この殺菌にはレトルト釜という専用設備が必要で、 殺菌条件の設定と検証には専門知識が要ります。 飲食店の厨房設備で「湯煎で長めに加熱」しても、この基準は満たせません。
2. 現実的な参入ルートはOEM
自前でレトルト製造ラインを持つには、密封包装食品製造業等の許可とレトルト釜への設備投資が必要です。 小規模事業者の現実的な選択肢は、レトルト製造を受託するOEM工場への委託です。 レシピを渡し、工場が殺菌条件を設計し、 自社は販売者として商品を売る形になります。
この場合、表示の製造者欄は「販売者+製造所固有記号」または 「販売者と製造者の併記」の形を取ります。使い分けは製造者・販売者・加工者表示の使い分けで解説しています。
3. 一括表示の記載例
レトルトカレー(パウチ200g、OEM製造)の表示例です。
| 名称 | カレー |
| 原材料名 | 野菜(玉ねぎ(国産)、にんじん)、牛肉、カレールウ(小麦粉、食用油脂、カレー粉)、トマトペースト、砂糖、食塩(一部に小麦、牛肉、乳成分、大豆、りんごを含む) |
| 添加物 | 調味料(アミノ酸等)、カラメル色素 |
| 殺菌方法 | 気密性容器に密封し、加圧加熱殺菌 |
| 内容量 | 200g |
| 賞味期限 | 2028.7(年月表示) |
| 保存方法 | 直射日光を避け、常温で保存してください |
| 販売者 | 〇〇食堂 東京都〇〇区〇〇1-2-3 +製造所固有記号 |
レトルトパウチ食品には「気密性容器に密封し、加圧加熱殺菌」のような殺菌方法の表示が必要です。 賞味期限が3か月を超えるため年月表示が使えます。 ルウ経由の乳成分、りんご(チャツネ)など、 OEM工場のレシピ確定時にアレルゲンリストを固めてください。
4. レトルト特有の注意点
「保存料不使用」の見せ方
レトルト食品は殺菌技術によって保存料なしで長期保存を実現しています。 「保存料不使用なのに1年もつのは怪しい」という消費者の誤解に対しては、 「レトルト殺菌により保存料を使用せずに常温保存を可能にしています」のような 仕組みの説明を添えるのが有効です。 無添加系の強調表示は2022年のガイドラインで整理されているため、 書き方は慎重に選んでください。
店の味の再現度と表示の乖離
レトルト化では殺菌の加熱で味が変わるため、OEM工場との試作を重ねることになります。 最終レシピが店のレシピと変わったのに、 初期の想定で作った表示を使い続けると原材料表示と実物がずれます。 表示は最終確定レシピから起こす、という当然の手順を試作の熱気の中で忘れないでください。
よくある質問
Q. 真空パックして冷蔵販売すればレトルトの代わりになりますか?
A. 真空パック+冷蔵は別のカテゴリの商品設計です。常温長期保存はできず、 むしろ真空包装はボツリヌス菌のリスク管理(低温管理の徹底等)が必要になります。 安易な真空パック常温販売は最も危険なパターンです。
Q. OEMのロットはどのくらいから受けてもらえますか?
A. 工場によって異なりますが、小ロット対応の工場でも数百から数千食単位が一般的です。 初期ロットの在庫リスクと賞味期限を考慮した販売計画を先に立ててください。
まとめ
レトルト食品は、加圧加熱殺菌の規格基準という高い壁があり、 小規模事業者はOEM委託と販売者表示の組み合わせが現実的な参入ルートです。 殺菌方法の表示、年月の賞味期限、最終レシピからの表示作成という レトルト固有の実務を押さえてください。
物販商品の採算設計はレシピ原価計算の基礎をご参照ください。
参照法令: 食品衛生法(容器包装詰加圧加熱殺菌食品の規格基準)、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)
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