密封包装食品製造業許可|瓶詰・レトルトの常温流通に必要な資格
この記事の要点(3点)
- ・ 密封包装食品製造業は2021年新設の許可区分。瓶・缶・パウチに密封して常温流通させる食品の製造が対象
- ・ 背景はボツリヌス菌のリスク管理。密封+常温という条件が最も危険な組み合わせだから許可制になっている
- ・ pH4.6以下または水分活性0.94以下等の条件を満たす食品は対象から除外される。ジャムやピクルスの多くはこの除外側に入る
根拠: 食品衛生法(2021年6月施行の改正営業許可制度)
1. なぜ「密封+常温」だけが特別扱いされるのか
瓶詰やレトルトパウチの製造だけに専用の許可区分がある理由は、ボツリヌス菌に尽きます。 この菌は酸素のない環境(=密封容器の中)を好み、 常温で増殖して強力な毒素を作ります。 冷蔵流通なら低温が、開放容器なら酸素が抑止力になりますが、 「密封して常温に置く」はどちらの抑止力もない条件です。
辛子れんこんの真空パックによる死亡事故など、 国内でも実際の事故が制度の背景にあります。 2021年の営業許可再編で密封包装食品製造業が新設されたのは、 この特有のリスクを持つ製造行為を許可で捕捉するためです。
2. 対象と除外の線引き
全ての瓶詰が対象になるわけではありません。 ボツリヌス菌が増殖できない条件を満たす食品は対象から除外されます。
- 除外の代表的条件:pH4.6以下(十分に酸性)、または水分活性0.94以下(十分に低水分)等。 この条件では芽胞が発芽増殖できないとされる
- 除外側に入りやすい食品:高糖度ジャム、酢の効いたピクルス、はちみつ、シロップ等
- 対象側に入りやすい食品:低酸性の野菜水煮、スープ、カレー、パスタソース、肉や魚の瓶詰・レトルト等
除外に該当するかは自分のレシピの pH と水分活性の実測が根拠になります。 「ジャムだから除外のはず」ではなく、低糖度レシピなら測って確かめる。 この確認プロセス自体が保健所相談の内容になります。 ジャムとピクルスの各論はジャムの食品表示ラベルの書き方とピクルスの食品表示ラベルの書き方をご参照ください。
3. 許可取得と殺菌条件の設計
この許可の審査で他区分と違うのは、施設基準に加えて殺菌条件の妥当性が重い論点になることです。 対象食品(低酸性の密封常温品)には、 ボツリヌス菌の芽胞を殺す加圧加熱殺菌(120℃4分相当以上)等の 規格基準が適用され、これを実現する設備(レトルト釜等)と 工程管理が求められます。
小規模事業者がこの設備を自前で持つのは非現実的なことが多く、 実務の分岐は次の3択になります。
- レシピを除外側に寄せる:pH調整(酢、有機酸)や糖度設計で除外条件を満たし、この許可なしで作れる商品にする
- 冷蔵・冷凍流通に切り替える:常温をやめれば密封包装食品製造業の枠組みから外れる(別の許可区分の話になる)
- OEM委託:レトルト対応工場に製造を委ね、自社は販売者になる。詳しくはレトルト食品の食品表示ラベルの書き方をご参照ください
4. 最も危険な誤解: 真空パック神話
「真空パックすれば日持ちする」は、この分野で最も危険な誤解です。 家庭用真空パック機で調理品を密封し常温や冷蔵で長期保存する行為は、 ボツリヌス菌にとって好条件を作る行為そのものです。 真空パックは酸素を嫌う菌の抑止にはならず、むしろ競合菌を減らして リスクを高める場合すらあります。 事業として密封常温品を作るなら、 除外条件の実測か規格基準の殺菌か、どちらかの科学的裏付けを必ず持ってください。
よくある質問
Q. 高糖度ジャムなら許可は何もいらないのですか?
A. 密封包装食品製造業の対象からは除外され得ますが、 製造行為自体には別の許可・届出(漬物製造業、菓子製造業、調味料製造業等、 商品により異なる)が関わります。無許可でよいという意味ではありません。
Q. pHや水分活性はどこで測れますか?
A. 簡易のpH計での自主測定に加え、食品検査機関で正式な測定ができます。 許可判断の根拠にするなら検査機関の測定結果を保健所に示すのが確実です。
まとめ
密封包装食品製造業は、ボツリヌス菌対策として「密封+常温」を捕捉する許可です。 自分の商品が対象か除外かをpHと水分活性で判定し、 対象なら殺菌設備の現実性からレシピ変更、冷蔵化、OEMの3択を検討する。 真空パック神話を捨てることが、この分野の安全の第一歩です。
制度全体は食品の営業許可制度(2021年改正)の解説をご参照ください。
参照法令: 食品衛生法、容器包装詰加圧加熱殺菌食品の規格基準
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