魚の歩留まり率|三枚おろしで残るのは半分という現実


この記事の要点(3点)

  • ・ 丸魚の可食部(フィレ)は魚種により重量の40〜60%程度。頭・骨・内臓を引いた「フィレ単価」が本当の原価
  • ・ 皮引き・血合い除去・柵取りと用途が上がるほど歩留まりは下がる。刺身用の柵は丸魚の3〜4割ということも
  • ・ アラ(頭・骨・カマ)の商品化(あら汁、カマ焼き、だし)が実質歩留まりを大きく引き上げる。魚屋と和食店の伝統的な知恵

※ 歩留まりは魚種・サイズ・技術により大きく変わります。

1. 丸魚の半分は「身以外」でできている

1尾1000円、1kgのタイ。三枚におろすと、 フィレ(上身)は500g前後になるのが一般的な感覚です。 この時点でフィレのグラム単価は仕入れの2倍。 さらに皮を引き、血合い骨を落とし、刺身用の柵に整えると、 使える身は300〜400gまで絞られることもあります。 柵ベースのグラム単価は仕入れの2.5〜3倍という計算です。

「魚は原価が読めない」と言われる原因の大半は、 この歩留まりの目減りを仕入れ単価に反映していないことにあります。 寿司・刺身業態の計算実務は寿司店の原価管理で扱った通り、 「仕入れ→可食部→切り付け数」の段階記録が解決策です。

2. 用途別の歩留まり階段

状態丸魚比の目安主な用途
三枚おろしフィレ(皮付き)40〜60%焼き物、煮付け
皮引き・骨抜き済み35〜50%ムニエル、フライ
刺身用柵30〜40%刺身、寿司

同じ魚でも用途で原価が変わる。この階段を理解すると、 「この魚は焼き物で出すのが得か、刺身で出すのが得か」という 判断を、販売価格と歩留まりの両面で行えるようになります。

3. アラの経済学

丸魚の40〜60%を占める「身以外」は、廃棄すればロス、 使えば商品です。 あら汁・味噌汁(原価ほぼゼロの汁物)、カマ焼き(一尾から2つ取れる人気部位)、 骨せんべい、だし(潮汁、魚醤系ソース)。 和食と魚屋の伝統は、アラを使い切ることで 実質歩留まりをほぼ100%に近づける知恵の体系でした。

現代の小規模店でも、ランチの汁物・日替わり小鉢・まかないへの アラ活用は、原価低減と食品ロス削減を同時に実現します。 「アラを出すメニュー枠」をあらかじめ持っておくことが、 丸魚仕入れを成立させる条件です。 アラ活用の原価計算では、アラの原価をゼロと置くか、 仕入れ額を身とアラに配分するかで流儀が分かれますが、 どちらでも一貫していれば管理として機能します。 大事なのは「アラで作った汁物の売上」が記録に乗ることです。

4. 仕入れ形態の選択: 丸魚か、フィレか

  • 丸魚仕入れ:単価は安いが、歩留まりリスク・技術・仕込み時間・アラ活用力が必要。 鮮度と産地の訴求力は最大
  • フィレ・柵仕入れ:単価は高いが歩留まりほぼ100%、技術不要、廃棄少。 人手の少ない店の現実解
  • 冷凍ポーション:定貫(重量が揃った)切身は原価計算が最も安定。 解凍ドリップの目減りだけ見込む

判断は「可食部単価+仕込み人件費」の総コスト比較です。 職人がいる店は丸魚の総コストが下がり、 いない店はフィレが正解になる。 自店の体制で式に入れる数字が変わることを忘れないでください。

よくある質問

Q. 魚種ごとの歩留まりデータはどこで手に入りますか?

A. 食品成分表の廃棄率が出発点になりますが、 魚は個体差と技術差が大きいため、主力魚種は自店で 数尾実測して基準値を作るのが確実です。

Q. 養殖魚と天然魚で歩留まりは違いますか?

A. 養殖魚は脂のりとサイズが安定しており、歩留まりのばらつきが小さい傾向があります。 原価計算の安定性という観点では養殖魚に利点があり、 天然魚は歩留まり変動込みで値付けする必要があります。

まとめ

魚の原価は、用途別の歩留まり階段を降りるごとに上がっていきます。 柵単価で値付けし、アラを商品に変え、 自店の体制に合った仕入れ形態を総コストで選ぶ。 「半分は身以外」という現実を数字にすることが、 魚で利益を出す第一歩です。

水産物の表示は水産物の表示をご参照ください。


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