遺伝子組換え表示の新ルール|分別生産流通管理と任意表示制度の改正点


この記事の要点(3点)

  • ・ 遺伝子組換え表示の対象は大豆・とうもろこし等9農産物・33食品群。これ以外は義務表示対象外
  • ・ 2023年4月施行の改正で「遺伝子組換えでない」の任意表示は不検出確認が必須となり、混入率5%以下では使用不可
  • ・ 分別生産流通管理(IPハンドリング)の確認書類がなければ義務表示を省略できない

根拠: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第17・別表第18、食品表示基準Q&A(消費者庁)

1. 遺伝子組換え表示制度の概要

「遺伝子組換えでない」とラベルに書けば、それで消費者に正しく伝わる、と考えたくなります。 しかし2023年4月の改正後は、この一文を書くための条件が大きく変わりました。

遺伝子組換え食品(GM食品)の表示は、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第17・別表第18に基づきます。 農林水産省が安全性審査を経て承認した農産物を原材料とする加工食品に対し、 その農産物が遺伝子組換えであるかどうかを消費者に知らせることを目的としています。

制度は大きく「義務表示」と「任意表示」の2つに分かれます。 義務表示は対象農産物(遺伝子組換え・非遺伝子組換えの分別をしていないもの等)を使用した場合に必要な表示です。 任意表示は、非遺伝子組換えである旨を積極的に消費者に伝えたい場合の表示で、 この要件こそが2023年4月の改正で厳格化された部分です。

区分表示内容義務/任意
遺伝子組換え農産物を使用「遺伝子組換え」または「大豆(遺伝子組換え)」義務
分別なし(IPハンドリングなし)「遺伝子組換え不分別」または「大豆(遺伝子組換え不分別)」義務
非遺伝子組換え(不検出確認済み)「遺伝子組換えでない」または「大豆(遺伝子組換えでない)」任意(要件あり)
IPハンドリング済み(検出可能性あり)義務表示なし。2023年改正後は任意表示も不可表示不要

2. 義務表示の対象:9農産物・33食品群

遺伝子組換え表示の義務対象となる農産物は食品表示基準 別表第17に定められており、 農林水産省が安全性審査を承認した農産物を原料とする加工食品が対象です。 現在、9農産物と、それらを原料とする33食品群が対象とされています。

対象9農産物

作物主な用途(例)
大豆豆腐・味噌・大豆油・煮豆等
とうもろこしコーンスターチ・コーン油・ポップコーン等
ばれいしょ(じゃがいも)スナック菓子・でんぷん等
なたね(キャノーラ)サラダ油・マーガリン等
綿実綿実油等
アルファルファ飼料・スプラウト等
てん菜(ビート・砂糖大根)砂糖等
パパイヤパパイヤ果実・パパイヤ加工品等
からしなからしな加工品等(2022年4月追加)

33食品群(主な例)

別表第17に定める33食品群のうち、加工食品として特に重要なものを示します。 なお、高度加工品(遺伝子組換えDNAやたんぱく質が検出不可能なもの)は 対象外となる場合があります(別表第17 備考参照)。

豆腐・油揚げ類
凍り豆腐・おから・豆乳
味噌
大豆煮豆
大豆缶詰・瓶詰
納豆
大豆を主な原料とするもの
コーンスナック菓子
コーンスターチ
ポップコーン
コーンフラワー
とうもろこし缶詰・瓶詰
ばれいしょでんぷん
乾燥ばれいしょ
ばれいしょ菓子
パパイヤ果実の加工品

※ 33食品群の全リストは食品表示基準 別表第17(消費者庁)を参照してください。 高度加工品(油・醤油・砂糖等)はDNA・たんぱく質が残存しないとして表示対象外とされるものがあります。

重要な判断ポイント:高度加工品は対象外

大豆油・なたね油・砂糖(てん菜由来)・コーン油・醤油(大豆・小麦由来)等は、 製造過程でDNAやたんぱく質が分解・除去されるため、 別表第17において遺伝子組換え表示の対象外とされています。 ただし、これらを含む加工食品の原材料として表示する際は、 別表第17の規定をあらためて確認してください。

3. 分別生産流通管理(IPハンドリング)とは

分別生産流通管理(IP管理・IPハンドリング)とは、 農場・輸送・保管・製造の各段階において、遺伝子組換え農産物と 非遺伝子組換え農産物を意図的に混入させないよう分別し、 その事実を書類で証明する管理手法です。

IP管理が適切に行われていると証明できる場合(IPハンドリング確認書類がある場合)は、 「遺伝子組換え不分別」の義務表示が不要になります。 ただし、意図しない混入が5%以下であることがIP管理の要件です (食品表示基準 別表第17 備考)。

IPハンドリングの状況別表示まとめ

IPハンドリングの状況義務表示任意表示(2023年4月改正後)
GMO農産物を使用「遺伝子組換え」と表示義務非GMO旨の任意表示不可
IPなし(分別未実施)「遺伝子組換え不分別」と表示義務非GMO旨の任意表示不可
IPあり(5%以下混入・書類あり)義務表示不要「遺伝子組換えでない」は不可(検出可能性があるため)
IPあり(不検出・書類あり)義務表示不要「遺伝子組換えでない」の任意表示が可能

4. 2023年4月施行:任意表示制度の厳格化

2023年4月1日施行の食品表示基準改正により、 「遺伝子組換えでない」という任意表示の要件が大幅に厳格化されました。

改正前後の比較

項目改正前(〜2023年3月)改正後(2023年4月〜)
「遺伝子組換えでない」の要件IP管理済みで混入率5%以下であれば任意表示可遺伝子組換えDNA等が不検出でなければ表示不可
IPハンドリングのみの場合「遺伝子組換えでない」表示が可能だった表示不可。義務表示不要のみ(何も表示しない)
経過措置2023年4月1日施行
実務上の影響:

2023年4月以降、IPハンドリング書類があっても検査で遺伝子組換えDNA等が検出された場合は 「遺伝子組換えでない」と表示できません。 検出限界以下(不検出)であることを検査機関の証明書等で確認し、定期的に更新する必要があります。 旧ラベルを2023年4月以降も使い続けることは表示基準違反になる可能性があります。

「不検出」の確認方法

「不検出」とは、定量PCR法等の分析方法により遺伝子組換えDNAやたんぱく質が 検出限界以下であることを意味します。 農林水産省消費安全技術センター(FAMIC)等の公的・民間の食品検査機関に 検査を依頼し、証明書を取得・保管することが実務的な対応です。

5. よくある誤りと実務ポイント

よくある誤り1:高度加工品にも表示が必要だと思い込む

大豆油・砂糖・醤油等の高度加工品は、製造工程でDNA・たんぱく質が残存しないとして 別表第17の義務表示対象外とされています。 これらを原材料に使用する加工食品では、大豆由来・てん菜由来の旨を 遺伝子組換え表示する必要はありません。

よくある誤り2:2023年改正後も「遺伝子組換えでない」を継続使用

改正前に適法だった「IP管理済み・混入率5%以下」のラベルは、 2023年4月1日以降は要件を満たさない可能性があります。 不検出確認を新たに取得せずに旧ラベルを使い続けることは問題があります。 ラベルの見直しと検査証明書の取得が必要です。

よくある誤り3:対象外食品に非GMO表示を付ける(過剰表示)

別表第17の33食品群以外の食品に 「遺伝子組換えでない」と任意表示することは、 消費者庁ガイドラインにより不適切な表示とされる場合があります。 対象外食品への非GMO旨の表示は慎重な判断が必要です。

実務ポイント:サプライヤーからの情報収集と書類管理

使用する原材料が義務表示対象の9農産物・33食品群に該当するかどうかは、 仕入れ先サプライヤーからGMO情報(IPハンドリング証明書・検査証明書)を 収集して判断します。複合原材料を使用する場合は、 その構成原材料まで遡及して確認しないと、対象品目を見落とします。 書類の有効期限管理と更新サイクルの構築も実務対応の一部です。

まとめ

遺伝子組換え表示制度は、義務表示(9農産物・33食品群が対象)と任意表示(2023年4月改正で厳格化)の2本柱です。 IPハンドリング証明書の取得や管理と、任意表示を行う場合の「不検出」確認が主な実務対応事項です。

特に2023年4月以降は「遺伝子組換えでない」の任意表示要件が不検出確認必須へと変更されており、 旧ラベルの継続使用には注意が必要です。 高度加工品(油・醤油・砂糖等)が義務表示対象外であることも、 原材料表示の正確性を左右します。

食品表示ラベル全体の作成方法については食品表示の作り方・ラベル作成手順も合わせてご確認ください。原材料名の記載順序については原材料名の記載順序ルールで詳しく解説しています。

参照法令: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)別表第17・別表第18、 食品表示基準Q&A(消費者庁)、 消費者庁「遺伝子組換え食品の表示に関するガイドライン」


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