食肉販売業許可|精肉店・肉のEC販売に必要な手続き
この記事の要点(3点)
- ・ 食肉の小売(カット、盛り合わせを含む)には食肉販売業の許可が必要。包装済み食肉のみを販売する形は届出で足りる整理になった
- ・ 生肉はカンピロバクター、腸管出血性大腸菌という重大な病原体の管理が前提。器具の分離と温度管理が審査と運用の中心
- ・ 味付け肉やハンバーグへの加工は製造業(食肉製品製造業・そうざい製造業)の領域に入る。精肉店の総菜展開の定番論点
根拠: 食品衛生法(2021年6月施行の改正)
1. 「切るかどうか」で変わる手続き
2021年の再編で、食肉販売の手続きは取り扱いの深さで分かれました。 枝肉やブロックを仕入れて店でカット、スライスして売る営業は食肉販売業の許可。 パック済みの精肉を仕入れてそのまま売るだけの形 (コンビニやドラッグストアの冷凍肉販売等)は届出で扱われます。
「切る」という行為は、器具を介した交差汚染のリスクを生むため、 許可(施設基準の審査あり)の側に置かれています。 自分の業態がどちらかは、カット行為の有無で判定してください。
2. 審査と運用の中心: 病原体管理
生肉の衛生管理は、鶏肉のカンピロバクター、 牛肉の腸管出血性大腸菌(O157等)という 重症化し得る病原体を前提に設計されます。
- 専用器具と分離:肉用のまな板、包丁、スライサーの専用化。他食材との作業場・保管の分離
- 温度管理:冷蔵ショーケース(10℃以下、ひき肉等はより低温運用)、冷凍(-15℃以下)の記録
- スライサーの洗浄殺菌:分解洗浄の頻度とルール。スライサーは交差汚染の主役になりやすい設備
- 生食提供の禁止事項:豚肉・牛レバーの生食用販売は禁止、鶏の生食は規格基準なし。食肉の表示で扱った加熱用表示との一体運用
3. 精肉店の総菜展開と許可の階段
精肉店の経営は、生肉の販売だけでは粗利が限られるため、 コロッケ、から揚げ、味付け肉、ローストビーフといった 加工品への展開が定石です。この展開は許可の階段を登ることを意味します。
| 展開 | 関わる許可の目安 |
|---|---|
| 店内で揚げるコロッケ・から揚げのその場売り | 飲食店営業等の併設(自治体運用による) |
| 味付け肉のパック販売、惣菜の卸 | そうざい製造業 |
| ハム・ソーセージ・ローストビーフ等の製造 | 食肉製品製造業(要件が重い) |
特にハム・ソーセージ類(食肉製品)は成分規格と製造基準を持つ 重い許可区分です。 「自家製ベーコンを売りたい」という希望は、 この食肉製品製造業の壁に突き当たることを最初に知っておいてください。
4. 肉のEC販売
冷凍肉のEC販売は成長分野ですが、構成は 「許可施設でのカット・包装+冷凍便の配送」になります。 配送中の温度維持(再凍結の防止)、 解凍方法の案内、冷凍食品の表示に準じた保存方法の記載が実務の柱です。 ふるさと納税の返礼品としての肉も同じ枠組みで動いています。
EC展開時は表示の整備も同時に必要です。 パック精肉としての名称・原産地・期限・保存方法に加え、 商品ページ側にも同じ情報を載せることで、 購入判断の材料を提供できます。 冷凍肉は解凍後の再冷凍を避ける案内、 ドリップ(解凍時の液)の扱いの説明があると、 初めて肉をECで買う消費者のクレームを大きく減らせます。
よくある質問
Q. 狩猟したジビエを販売できますか?
A. 野生鳥獣の肉は、食肉処理業の許可施設で解体されたものでなければ 販売できません。狩猟者が自家解体した肉の販売は不可です。 処理施設を通したジビエを仕入れる形で設計してください。
Q. 焼肉用に切っただけでも「そうざい」になりますか?
A. カットのみは食肉販売業の範囲です。タレに漬け込む等の調味加工が入ると 製造側の性格を帯びます。境界は保健所に確認してください。
まとめ
食肉販売業は、カット行為の有無で許可と届出が分かれ、 病原体管理(器具分離と温度)が運用の中心になる営業です。 総菜やハム製造への展開は許可の階段を意味するため、 事業計画の段階でどこまで登るかを決めて保健所に相談してください。
肉の原価管理は歩留まり率を考慮した原価計算をご参照ください。
参照法令: 食品衛生法(2021年6月施行改正)、食品、添加物等の規格基準
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