トランス脂肪酸の表示|日本で義務化されていない理由と任意表示
この記事の要点(3点)
- ・ トランス脂肪酸の表示は日本では義務化されていない。日本人の平均摂取量がWHO目標を下回るという評価が背景にある
- ・ 表示する場合は消費者庁の任意表示ガイドライン(飽和脂肪酸・コレステロールと併記等)に沿う
- ・ 「トランス脂肪酸ゼロ」「フリー」の訴求には基準(100g当たり0.3g未満で0表示可等)があり、根拠なしには使えない
根拠: 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)、トランス脂肪酸の情報開示に関する指針(消費者庁)
1. なぜ日本では義務でないのか
米国のように規制の厳しい国があるのに、日本でトランス脂肪酸表示が義務でないのは 怠慢なのか。この疑問には、摂取量の実態という答えがあります。 食品安全委員会の評価では、日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は WHOの目標(総エネルギーの1%未満)を下回るとされ、 通常の食生活での健康影響は小さいと判断されてきました。 脂質の摂りすぎ全体の方が優先課題という整理です。
ただし義務でないことは、関心が低いことを意味しません。 健康意識の高い消費者層はトランス脂肪酸の情報を求めており、 事業者の自主的な情報開示のための指針(消費者庁)が用意されています。 「義務ではないが、開示するならルールがある」領域だと理解してください。 この構図はカフェインと同じで、カフェインの表示でも扱っています。
2. 任意表示のルール
消費者庁の指針では、トランス脂肪酸を表示する場合の考え方が示されています。
- トランス脂肪酸の量だけを単独で示すのではなく、飽和脂肪酸とコレステロールの量も併せて開示する(トランス脂肪酸を減らして飽和脂肪酸が増える置き換えを消費者が評価できるように)
- 「0」と表示できる基準:食品100g当たり(飲料は100ml当たり)トランス脂肪酸0.3g未満
- 「低減」をうたう場合は比較対象と低減量の明示
「トランス脂肪酸フリー」を訴求したいなら、 原料(マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド)の規格書で 含有量を確認し、0表示基準を満たすことを計算で裏付けてください。 近年は油脂メーカーの低トランス脂肪酸化が進み、 部分水素添加油脂を使わない原料が広く流通しています。
3. 菓子・パン事業者の実務
トランス脂肪酸の議論の主戦場は、マーガリンとショートニングを使う 菓子とパンの分野です。実務の選択肢は3つあります。
- 触れない:義務でない以上、表示しない選択は正当。栄養成分表示(義務5項目)を正しく行う
- 原料で対応する:低トランス脂肪酸の油脂原料に切り替え、問い合わせに規格書ベースで答えられるようにする
- 開示する:指針に沿って飽和脂肪酸等と併記で開示し、健康志向層への訴求にする
避けるべきは、根拠なく「トランス脂肪酸ゼロ」「体に優しい油」と書くことと、 バター切り替えを「ヘルシー化」として単純に訴求することです (バターは飽和脂肪酸が多く、置き換えの評価は単純ではありません)。 栄養面の強調表示のルールは栄養強調表示のルールもご参照ください。
4. 輸出時は前提が変わる
米国は部分水素添加油脂(PHO)の食品への使用を原則禁止とし、 栄養表示にもトランス脂肪酸の項目があります。 台湾や韓国等でも表示義務があります。 国内向けの「表示不要」という前提は輸出では通用しないため、 海外販路を考える商品は最初から相手国基準で原料と表示を設計してください。
よくある質問
Q. マーガリン使用を隠したいのですが、表示しなくてよいですか?
A. トランス脂肪酸量の表示は任意ですが、原材料としてのマーガリンは 原材料名欄への記載が必要です。原料を隠す選択肢はありません。
Q. 「部分水素添加油脂不使用」と書けますか?
A. 事実であれば書けます。原料油脂の規格書で製法を確認し、 全ての油脂原料について裏付けを持ってから表示してください。
まとめ
トランス脂肪酸は「日本では義務でない」という事実と、 「開示するなら指針がある」というルールの2つを押さえれば整理できます。 ゼロ訴求には0.3g未満の基準、開示には飽和脂肪酸との併記。 輸出では前提が変わることも含め、根拠に基づく設計をしてください。
栄養成分表示の基本は栄養成分表示の計算方法をご参照ください。
参照: 消費者庁「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」、食品安全委員会の評価書
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